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12   ノイエヴァ−ル大戦@
更新日時:
H24年9月5日(水)

 
 この文章はグローランサーWで発生したノイエヴァール大陸全土を巻き込んで行われた戦争に参加した諸国を紹介したページです。またもや、私見と事実及びネタバレが入り乱れていますので、其の点をご留意ください。例によって性格性は保障できません。(内務省)
 
 
 
 
 
 
 
 ノイエヴァール大陸には戦乱の中から4つの国が誕生し、その角逐が大陸のあり方を決定した。
 そして、イグレジアス王国のデュルクハイム国侵攻により誘発されたノイエヴァール大戦は全大陸一体の連邦制度を成立させた。4カ国は戦勝国、敗戦国それぞれの歴史を背負いながら連邦の中で共存することになった。
 では、この4カ国はどのような国家であったろうか?ここでは、おもに大戦前後の各国の政策、特色を紹介したい。
 
 
■マーキュレイ王国
 君主 アリシア女王(国主)
 王都 マーキュリア
 
 大戦の戦勝国。古くから観光名所として発展し、さらに他の大陸との貿易も盛んであり経済的に豊かな国であった。ヴァルカニアも同国を財源として重視していた。
 国王を中心とした王政国家であったが、大戦前後のアリシア女王は国主を名乗り、寛容かつ開放的な政策を進めており、平和的な王家との印象を与えた。
 しかし、その一方でメルキュースの神託を信奉したり、女王の素顔を隠したりするなど伝統主義は強固かつ狂信的な面があり、このアンバランスさが、この時期のマーキュレイ王室の特徴であった。
 固有の軍事力は王宮警備の兵のみで他国からの侵略への対処についてはもちろん国内の治安維持すらも同盟国ヴァルカニアに依存していた。治安保護支度金が高額であったことは推察に難くない。軍事面ではマーキュレイはヴァルカニアの保護領と言って良い状態であった。
 この関係は古くから続いているものであった。経済的に恵まれていたマーキュレイは他国からの侵略を惹起していた。この脅威に対処するため、ヴァルカニアの保護下に入ったのであった.。
 しかし、大戦でマーキュレイはこのヴァルカニアと対峙することになった。
 戦場でのマーキュレイ軍はしばしば、異邦人が指揮を執るなどの指揮官の不足、また兵員の訓練不足を伺わせる場面が散見される。同国が急遽徴兵を行い、訓練未了の兵士が戦闘に投入されたという印象を否定できない。
 しかし、一方でマーキュレイは経済大国であり、傭兵を雇い入れた可能性が高い。実際、デュルクハイム軍の戦闘においては互角の戦いを演じている。戦いに慣れていない徴兵だけではこの結果は難しいのではないだろうか?
 ここは、徴兵した兵士と傭兵の二本立てで軍備増強を図ったと考えるほうが自然だろう。
 また、マーキュレイは開戦直後に強力な増援を得た。ヴァルカニアに属するオーディネル領の離反と同盟である。オーディネルはロイヤルガード アルフォンス・オーディネルに指揮される2万の精鋭を擁し、これによりマーキュレイの軍事力は飛躍的に向上した。以後、オーディネル軍はマーキュレイの前衛部隊として厳しい戦闘を戦うことになる。
 当初は絶望と思われた戦況も、劇的な勝利、奇跡の連続により不利から優勢に転換していた。
 当初、この国の戦争目的はヴァルカニアの不当な圧迫に対し自国の独立を守ることであったと思われるが、いつしか、大陸の平和を自らの考え出した連邦システムによって達成しようとする戦いに変わっていった。
 マーキュレイはヴァルカ二アを降伏させ、さらにはデュルクハイムとの戦いにも勝利を収め、其の目的を達することになる。
 この連邦制度は当時ととしては「理想的」かつ「平和的」なものであった。
 このシステムが考え出された背景には戦場での悲惨な記憶があり、又マーキュレイの指導者の気質によるところがあるのは間違いない。しかし、同時に戦前のマーキュレイの状態、国柄も同様に影響を与えたのではなかろうか?
 ヴァルカニアの保護下に入ることで国家的な独立、威信は傷ついているかもしれない。
 しかし、軍事的脅威への対抗、治安維持、外交での駆け引きといった重責はある意味ではヴァルカニアが引き受け、マーキュレイ自身はこの負担が軽かったことは確実だろう。
 これは、自国の理想主義と平和主義を磨くのに絶好の環境であったろう。また、それまでの外交に参加していないということはそれまでの外交上の柵に囚われないことも意味している。
 加えて商業が発展しているということは商人の力が国の中で強いことも意味する。一般に商人は国を超えて商いを行うため、国家に対する執着がやや薄い面がある。国の体制を王政から共和制に変えることに抵抗が少なかったのはこのことにも関連があるように思える。
 ヴァルカニアが自らの王政を投げ捨て、それまでの外交での覇権主義を捨てることができたであろうか?
 デュルクハイムは自国の民主制を他国に移植しようとするかもしれない。しかし、其の独立性をある一定のラインで保障するだろうか?
 自国の食糧難解消のために戦っているイグレジアスは戦後の大陸全土のことに考えを巡らせる余裕はあっただろうか?
 このように見ると、連邦システムはこの時代のマーキュレイでなければ提案しえなかったものであるかもしれない。
 
 
 
■ヴァルカニア王国
 君主 ヴァルカニア王
 首都 キルグリッド
 
 戦前には最大の領土、最強の軍備、高度な文化を誇った大国であった。
 国王が一切の決裁を行い、配下の文官、武官がその政策を実行してゆく。という典型的な王政を敷いている。軍事面では国王の側近中の側近であるロイヤルガードがその重責を担い、それぞれ2万の軍隊を指揮した。合計すれば6万であり、他に各都市の守備隊もいたとすれば、総兵力は7万に近い数字であったと思われる。
 ロイヤルガードは家柄、門地のみで選ばれるのではなく実力で選ばれている。その意味でこの国は安易な貴族主義に陥っているわけではない。
 国王もまた、自分の決定によく責任を持ち、領民を思いやる人物であり、劣悪な王ではなかった。
 しかし、大戦の結果、ヴァルカ二アは屈辱的な敗北を喫した。その原因となったのがマーキュレイへの侵攻、オーディネルの離反であった。とりわけオーディネルの離反は重大で、それは全兵力のうち約三割が敵に回ったということであり、其の時点で戦前に考えられていた戦争計画は崩壊した。
 マーキュレイに入った現地軍が行ったのは王宮の接収、文官の拘束、財宝の強制徴収であった。これらの措置は疑いなく不当かつ強引なものであった。現地軍の暴走か否かは別にして、最終的にヴァルカニア王は現地軍の行動を追認、マーキュレイの完全征服を指向した。
 この時、王は圧倒的な軍事力を背景に支度金を増額する方法を考えなかったのであろうか?
 一つには、短期間で大した損害も受けずに勝利する見込みがあったからだろう。これは客観的に見ても首肯できる予測であった。
 そして、もう一つはマーキュレイが事実上の保護領であったことにも原因があるのではないだろうか?マーキュレイの軍事努力は王宮警備のみであり、その他をヴァルカニアに委託していた。この大陸においては四カ国は争いが絶えず、力こそ正義という価値観に王が傾斜していたとしても無理はない。事実王は戦争中の財源確保のために、マーキュレイの接収を決意している。
 その彼にすればマーキュレイの軍事に対する態度は理解しがたいものであったろう。現地軍が行った行為は独立国に対してならば十分に非常識な行動だが、非常時の今、保護国にそれを行っても構わないのではないか?
 武力に無関心な保護領ならこれらの行為は甘んじて受け入れるべきではないか?
 王がこのように考えた可能性を否定できない。
 しかし、この屈辱に対し、マーキュレイは自国の尊厳を守る決断を下したのであった。このような価値観や意識の差は摩擦を生みやすいものである。戦争回避に尽力した両国の文官が突き当たったのはこのような価値観の相違であったのかもしれない。
 戦闘は予想に反し、敗北の連続であった。魔動砲やロイヤルガードの決死の努力にも関わらず、王都付近にまで敵の接近を許すことになった。
 ヴァルカニア王はここで敗北を認め、自らの首を差し出すことで和平交渉の開始を指示した。デュルクハイムと対峙している今ならそれほど過酷な条件は出されまいと王は踏んでいた。
 マーキュレイが提示した条件は自治権は尊重されるものの、国内の政治体制を完全に破壊するものであった。
 王がこの条件を知ったら、何と考えるだろうか?おそらく、その理想主義とそれまでの外交常識を無視した提案に戸惑うのではないだろうか。
 力こそ正義。その大陸にあって国を守るために、力による外交、戦争を行い、自らの命と引き換えに常識的な外交による解決を図ったヴァルカニア王はそれまでのノイエヴァール大陸の秩序を体現した人物だったと言い得るだろうから。
 
 
 
■デュルクハイム国
 大統領 デリンガー →ルートヴィッヒ(総統)
 首都 デュルケン
 
 大陸東南部に位置する国家で、大陸唯一の民主国家であった。
 港湾都市、発達した商業と高度な技術、自国民を自足できる農業。
 これらのために他国から侵略を受けることも多かった。ある意味でマーキュレイと似た環境にあったが、この国の解決方法はマーキュレイとは正反対であった。
 それは自らの軍事力で脅威を打倒するというものであった。
 デュルクハイムはこの大戦において、戦闘部隊5万5千を戦場に送った。各都市の警備隊もいることから、総兵力は6万を超えていた可能性が高い。軍事指導者はルートヴィッヒ総統をはじめ、卓越した幹部を擁した。
 国家は選挙により選ばれた大統領に指導され、その統制下に軍が置かれた。そして、その大統領は国民が選んだ議員で構成される議会において、支持、あるいは批判を受ける。
 大統領選挙には現役軍人が立候補することは出来ないとの規定があり、政治と軍事が安易に癒着すべきでないとの意識があることを窺わせる。
 しかし、この国は現実に「軍事国家」と称された。
 資料は「大統領が外交のために軍を動かすことが可能で、なおかつ軍も作戦を有利にするために政治を動かすこともあり、そのため軍事国家と呼ばれる」と説明する。
 またサウドリックの一般人は「デュルクハイムは話し合いで解決できなければ軍事に頼る。だから軍事国家ってよばれるんだ。」と語る。
 しかし、これは当時のノイエヴァール大陸の諸国家ではごく当たり前のもの光景ではなかろうか?という疑問がわく。
 ヴァルカニア王は絶対的な権力を持ち、軍を外交のために動かすことはなかっただろうか?
 ヴァルカニアの軍人たち例えばロイヤルガードは王という政治的な存在に対し、個人的な忠誠を誓っていなかっただろうか?
これらは王政が主流のノイエヴァール大陸において良くみられたことではないだろうか?
 そして、マーキュレイは話し合いが決裂したからヴァルカニアとの決戦に打って出たのではなかったか?
 この国が他国と大きく異なるのは民主制をとっていたことであった。
 そして、国防の名のものとに国民が団結していた。このことは喜んで徴兵に応じる国民が多く、人口に対する兵士の割合が他国より高かったことを示唆する。
 例えばヴァルカニアに比べて人口が少ないにもかかわらず、兵力は同じ。そのような状態があったのではなかろうか?
 そうであるなら、他国がその点を脅威と捉えたとしても不思議はない。
 加えて、デリンガー大統領の外交姿勢は好戦的なものであった。「協定賛成派さえいなければ、多少の情報操作で戦争にもっていけるのだが・・・」大戦初期にヴァルカ二が不可侵協定を持ちかけてきた際の大統領の反応である。いまだにイグレジアスが抵抗を続けているにも関わらず、それまで重大な外交問題がなかった国に対する発言としては異様なまでに好戦的である。
 さらに、デュルクハイムはいきなりマーキュレイに奇襲攻撃をしかけている。恐るべきことに攻撃の前に外交交渉が行われている様子はなかった。
 そして、大戦後半に独裁権力を手にしたルートヴィッヒ総統は大陸全土はおろか世界征服を夢想する人物であった。
 この国は交渉に際してはまず強硬姿勢をとることが外交スタイルとして定着している可能性を否定できない。
 人口から見て過大な軍事力、そして好戦的な外交姿勢。これらが他国をしてデュルクハイムを「軍事国家」と言わしめた理由ではなかろうか?
 この軍事国家デュルクハイムもマーキュレイから同国の考案した連邦システムの中での共存を打診された。
 国家の主権を戦いに敗れたわけでもないのに連邦システムという得体の知れないものに差し出すことに難色を示した同国は戦場でマーキュレイとの雌雄を決しようとした。そして、敗北したのであった。
 しかし、この連邦システムはこの国のもう一つの呼び名である「民主主義国家」を各国が採ることが前提とされていた。自国の政治システム、根幹となる思想が大陸を制覇したことに密かな満足を覚える人は多いのかもしれない。
 
 
■イグレジアス王国
 君主 イグレジアス王
 王都 イスケンドロス
 
 北方の寒冷地帯を領土とする国家。
 この国も国王が絶対的な権力を握る王政国家であった。
 寒冷地帯であるため、作物が不作になりがちであった。結果、国民の飢餓状態を招くことが多かった。ために、同国は南方のデュルクハイム国の肥沃な領土を求めて戦争をしかけた。
 寒冷地帯、飢餓状態に陥りやすいという同国の特徴から考えて、人口がデュルクハイムを下回っていたことは確実だろう。それは、兵士の数の上限がデュルクハイムに劣ることを意味する。さらに、デュルクハイムは国防意識が高く、徴兵の効率は高く地形的にも守りやすい地勢にあった。
 このことから考えて、イグレジアスは全体的な軍事力で敵に劣った。
 では、何故、イグレジアスは戦争を選択したのだろうか?
 一つは食糧不足が深刻で、戦争を仕掛ける以外にないと王が認識したという可能性が考えられる。
 そして、もう一つの理由として開戦当初はデュルクハイムとの戦力差が対等か有利であった可能性が考えられる。資料には「急速に軍力の強化がすすめられている」とあり、デュルクハイムの戦力が開戦時には整っていなかったことが推察される。そして、戦争前半はイグレジアスが優勢であった事実からも開戦時の戦力はデュルクハイムに勝っていたのではなかろうか?
 しかし、戦局は次第に不利に傾く。
 資料はデュルクハイムの心臓部を狙って行われたアイゼンヴァント攻防戦こそこの戦争の決戦であり、これに敗れたことでイグレジアスの敗北は確定したと記述している。
 しかし、その後もイグレジアス軍は戦い続けた。決戦に敗れた以上その目的は勝利ではなく、より良い条件での講和、降伏であったのだろう。
 圧倒的な敵に対し、イグレジアスの防衛作戦はある意味で英雄的であった。
 死翼傭兵団の力を借りた場面もあったが、5万に及ぶデュルクハイム軍を総撤退に追い込み、第二次攻勢にも、粘り強い防戦を行った。死翼傭兵団壊滅後も総司令官ドラングース大将及び次席指揮官のガスタ少将をも戦死させ、デュルクハイム軍を再び総撤退に追い込んだ。
 この時のイグレジアスの軍事力は英雄ルートヴィッヒを以ってしても短期には屈服させることができないほど強力であった。少なくともイグレジアス上層部はそう思っていた。
 しかし、その判断はルートヴィッヒが行った天使を利用した作戦により軍は完全に崩壊した。
 イグレジアスに残されたのは完全な敗北であった。王政は解体された。
 この時期の占領政策については資料が極端に少ないため、多くのことが謎に包まれている。
 ルーミス・リヒトマン大佐など、良識派の指揮官が掌握する地域であれば占領政策は少なくとも民生的には寛容であった可能性がある。
 しかし、クリストファー・オーディネルの「自治を認められるんだから喜んで乗ってくる」との言葉から自治権は剥奪されていたと見るのが妥当だろう。
 しかし、それは短期間のことだった。まもなく軍事国家デュルクハイムはマーキュレイに敗北し、イグレジアスは連邦に加盟し、自治権を回復することになった。
 ある意味では幸運な国家だったといいえるのかもしれない。
 
 
参考資料:グローランサーWキャラクター&シナリオコレクション
 



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