この文章はグローランサー1作目のバーンシュタインとローランディアそしてランザックを巻き込んで行われた戦争の概説です。ところどころに私見が混じっている部分もあります。例によって正確性は保障できません。(内務省)
三国大陸と呼ばれる大陸には3つの国があった。
最大の領土を持ち、商業の盛んな国家ローランディア
最強の軍事力を持つ強兵の国バーンシュタイン
砂漠の民が集う国ランザック
この大陸史の主役たちである。
だが、この3国の中で歴史を動かしのたのはローランディアとバーンシュタインであった。
ランザックは国力の面で、軍事力の面で2国に遠く及ばなかった。この国は両国の紛争に巻き込まれないように、滅ぼされないように、独立を維持することに汲々としていたのだ。
ローランディアとバーンシュタインの間にある大峡谷。これが両国の間に壁となって横たわっていた。この峡谷の先に自国領を広げたい。時代によりそのように願った理由は様々であるが、その思いが両国の間に幾度かの戦争を呼び込んだのは事実であった。
三国戦争と呼ばれる戦争もまたその一ケースなのであった。しかし、この戦争は今までのものとは異なり、開戦の決意に人間以外のものが関わっていた。それも、自らの利益に奉仕させるために戦争を誘発させたのであった。
その人ならぬ存在は自らをこう名乗る。ゲヴェル―と。
バーンシュタインに新たな王、リシャールが即位した。当時バーンシュタインとローランディアの関係は友好的なものであり、新王即位もその関係に影響を与えるものではないと信じられた。
しかし、ここで一つの事件が起こる。ローランディア貴族グレック大公は式典中にリシャール王に斬りかかったのだ。この事件は後に判明するように、この時期復活の遂げつつあったゲヴェルのコントロールによりリシャールが行った自作自演のものであった。
ゲヴェルは自らの障害となる魔法、とりわけ魔力に長けたグローシアンの殲滅を意図しており、また、人間を支配下に置くために、人間同士の戦争を望んでいたのであった。
事件の発生後、ローランディアより派遣されていたレティシア王女殿下を代表とする代表団は囚われの身となり、さらに事件については緘口令が敷かれた。
事件の詳細についてはバーンシュタインの上層部にのみ「ローランディア貴族が新国王に斬りかかった」という事実のみが伝えられた。
この事件の処理について重臣たちの大半はローザリアとの交渉による解決を意見したがリシャール王はこれらの意見を退け、事件をローランディアからの宣戦布告と見做し、これに軍事的懲罰を加えることを決定した。
決定が下るとバーンシュタインの軍事機構は「強兵の国」と呼ばれるに相応しい対応を行った。ローザリアの目を欺きつつ兵力の動員、配置を完了して見せたのだ。
対ローランディア作戦は先代の参謀総長であったダグラス卿の計画を元としたものが完成していた。
同計画は北部および南部より峡谷を突破し、ローランディア挟撃することをその骨子としていた。とりわけ、道路網の整備が進んでいる南部からの進撃を重視していた。そして、この計画は奇襲性を重視する。ローランディア側が防戦態勢を整えてしまえば峡谷の突破はほぼ不可能になるか、成功するとしても膨大な損害が予想されたからだ。リシャール王がグレック卿の事件と開戦決意を秘匿したのはこのためであった。
さらにリシャールはランザックとの間に対ローランディア秘密軍事同盟をもちかけ、外交上の環境を整えつつあった。謀臣ガムランによる交渉は成功裏の内に進み、開戦直後にはランザックはローランディアに対する軍事行動を承諾したのであった。
このようなバーンシュタインの動きに対しローランディア側は驚くべき鈍感さを示した。情報機関は兵力の移動を把握していたと思われるが上層部は事態の進展にまったく気づいておらず、バーンシュタインの開戦決意を知ったのはラージン砦よりの報告を受けてからという始末であった。
バーンシュタインはまさにこれと同じ日、グレック卿の事件を公表し、同時にローランディアに対して宣戦を布告した。
この時、既にバーンシュタイン軍部隊は南部ラージン砦付近の大峡谷を突破すべく橋を建設中であった。
しかし、カーマイン・ホルスマイヤーの襲撃が成功し、建設途中の橋が破壊され、その再建に多くの時間を浪費することになった。これにより峡谷でバーンシュタインを阻止することは出来ないまでも、軍部隊の編成を完了した状態で敵を迎え撃てる態勢が出来たのであった。
北部に目を転じると、インペリアルナイト オスカー・リーブズ率いる1万2千のバーンシュタイン軍は妨害を受けることなく峡谷の突破に成功し、進撃を開始した。北部ではローランディアは軍の編成すら完了できずにおり、この時バーンシュタイン軍の進撃を妨害したのは悪路のみであった。
一方ランザック王国は参戦準備を完了し、南部ラージン砦においてローランディア、バーンシュタイン両軍の戦闘に介入する機会を伺っていた。この時、戦闘に投入されたのはランザック軍はほぼ全力の4万であり、歴戦のウェーバー将軍に指揮されていた。その数は周辺のバーンシュタイン・ローランディアのいずれに対しても優勢であった。
この方面のバーンシュタイン軍は新任のインペリアルナイト アーネスト・ライエル及びジュリアン・ダグラスに率いられた部隊であり、3万の兵力を保有していた。彼等は現地ランザック軍との綿密な打ち合わせを行った。攻撃のタイミングはバーンシュタイン軍とローランディア軍の戦闘がたけなわになったころ、決定的な瞬間にランザック軍がローランディア軍の背後を衝くというものであった。
もしも、この作戦が成功すればローランディアの重要都市グランシル、王都ローザリアの前に遮るのものは何もない。
バーンシュタイン軍は進撃を開始した。この挑戦に対し、ローランディア軍もブロンソン将軍が指揮する南部方面軍が同数の3万の兵力で応じた。
南の平原で両軍は対峙し、戦闘開始のラッパとともに前進を開始、開戦後初めての大規模戦闘の幕が開けた。
戦闘は意外な展開を見せた。
ブロンソン将軍はバーンシュタイン軍の中央突破を目指し、陣形を楔形に編成し、その先端に最強の部隊を配置した。この部隊はインペリアルナイトを前にして恐怖とない交ぜになった破れかぶれのような奮戦を見せ、バーンシュタイン軍の中央を圧迫した。
アーネストは意外な敵兵の善戦に驚いたが、ランザック軍が背後を衝くにはローランディアが今のように攻勢一辺倒で背後の危機に気づかないならむしろ好都合と判断し、中央突破完成はならないように側面攻撃を仕掛け、ローランディアの進撃を遅滞させつつも戦線を後退させた。
ここで、ランザック軍に背後に回りこまれ、ローランディア軍は殲滅されるはずであった。しかし、全くの偶然がローランディア軍を救うことになる。
ランザック軍は何かのミスでバーンシュタイン軍の後方に出現していた。さらに彼等はバーンシュタイン側から攻撃を受けたと誤認し、そのままなし崩し的にバーンシュタイン軍との戦闘に突入してしまったのだ。
今度は逆にバーンシュタイン軍に包囲の危機が迫る形となったが、予備軍を率いていたジュリアン軍の反撃でランザック軍が怯んだ隙を衝き、アーネストは軍の撤退を完了させたのであった。
アーネストはランザックが敵になった以上峡谷の対岸に陣取るのは危険と判断し、建設した橋を焼き払い、これが戦闘のカーテンコールとなった。この戦闘でバーンシュタイン軍の損害は死傷他1万に達した。
ローランディアは奇跡のような勝利を得たのである。
なお、ランザック軍のバーンシュタイン攻撃の原因については、全く不明であり、一部にはカーマイン・ホルスマイヤーの関与を指摘するものもいる。この件についてローランディア王国とバーンシュタイン王国は資料の公開を拒否している。
南部での戦いが終わったころ、ローランディアはランザックとの間に不可侵条約を締結した。これにより南部での脅威は当面無いものと判断したローランディアは北部より侵攻を続けるリーブス軍の撃退に全力を挙げた。
ベルナード将軍率いる2万5千人の北部方面軍が編成され、兵力上約2倍の戦力を整えた。さらに、建設中であった北部に抜ける国道が開通し、補給線が確保された。
このように優勢を確保した北部方面軍は攻勢に出た。これに対し、バーンシュタイン側は補給線すら十分に機能しておらず、また悪路を進撃した結果、疫病が発生、2千人の損害を出しており、リーブスは再三、本国に増援を要求したものの、ランザックへの備えの必要から増援は遅れ、ローランディアの攻勢に圧倒されることになった。
リーブス軍は7千の死傷者を出し、攻勢発起点である北の橋すら放棄する結果となった。
これがローランディア軍のバーンシュタイン本国侵攻に繋がらなかったのは最終段階において、本格的な増援が間に合ったらからだった。アーネスト・ライエル率いる1万が来援し、その撤退を援護したのである。
また、もうひとつの要因はローランディア側のあまりの兵力損耗にあった。リーブス軍は敗れたとはいえ、重大な損失を北部方面軍に与えていた。この時点で損害は1万3千の死傷というものであった。100人を同時に相手にしうるというインペリアルナイトの評判が虚名でないことを知ったローランディアは死ぬほど驚いた。
北部での戦いは攻撃衝力を失ったローランディア軍と守りの姿勢に入ったバーンシュタイン軍がにらみ合う形となり膠着状態に陥った。
バーンシュタインとローランディア両国の戦線は南部、北部ともににらみ合いの形勢となり、このまま長期戦に移行するかと思われた矢先に別の国が動いた。
ランザック軍によるバーンシュタイン侵攻であった。
ランザックは砂漠の国家であり地味の豊かな北方に領土を広げることは悲願であった。彼等は北方にアーネスト軍が支援に向かったことで南部のバーンシュタイン軍の兵力が低下した今こそが好機と考えたのだ。ウェーバー将軍が指揮する4万の遠征軍が北上を開始した。
これに対し、バーンシュタイン軍は南部にはジュリアン将軍の1万の部隊と首都のリシャール王指揮下の2万5千の兵力を保持していたが、両者の距離は離れており、合流しなければ各個撃破される可能性があった。
ジュリアンは兵力2千をガルアオス監獄の護衛に残し、残余の8千と緊急動員した民兵隊4千を引き連れ、リシャール軍との合同を目指した。
これが、ランザック軍の偵察部隊に発見されたのである。ウェーバーはジュリアン軍撃滅のため、軍主力を移動させた。発見、捕捉に成功したのはその2日後であった。
ジュリアン軍は完全に虚を衝かれた。兵力で劣り、奇襲されたとあっては、どうにもならず壊走した。
これによりウェーバーは残るはリシャール軍のみと判断し、これに決戦を挑んだ。
リシャールは兵力が劣のは承知して、迎撃の準備を整えていた。小高い丘に陣を構え、攻め上ってくるランザック軍を狙い打った。しかし、それも限界があった、次第に防衛ラインが突破され、予備隊は空になり、ウェーバーは勝利を確信した。
だが、ここで予想外のことが起こった。側面に現れた軍が突然、ランザック軍を襲ったのだ。
この軍の正体はジュリアン軍であった。
同軍はランザック軍との戦闘でちりじりになりながらも兵力9千の再編成に成功し、決定的な瞬間での奇襲に成功したのだ。
これにより戦況は一挙に逆転した。戦列が崩れ、他客に移るランザック軍に対して、徹底的な追撃戦が決行された。ランザックは2万5千の損害を出した。壊滅だった。
ここで、バーンシュタインはランザック侵攻を決意した。ジュリアン将軍に兵力2万を与え、遠征軍が組織された。遠征は時をおかずに実施された。リシャールはこう着状態に陥っている戦局をランザック占領、ランザックからの北上してのローランディア侵攻で打ち破ろうとしていた。
「兵は神速なり」の原則を字でいくような侵攻にランザックは体勢を整える暇さえなかった。国境防衛ラインは瞬時に突破され、ガラシールズをも陥落。ランザック王都は上を下への大騒ぎとなった。遠征軍の残存部隊そして、民兵が集められ軍が編成される。
さらに、不可侵協定に続き攻守同盟も締結した同盟国ローランディに悲鳴のような救援要請を出し続けた。
しかし、後者はすぐに実を結ぶ類のものではない。
ローランディアの援軍が来る前に勝負を決める決意であったジュリアン軍はガラシールズを進発し、ランザック王都に迫った。
戦闘は一方的であった。進撃するジュリアン軍の前に次々とランザック軍は撃破されていった。だが、ここでウェーバーの迂回戦術が劇的な効果を表した。あまりにハイペースな進撃に追いつけなくなっていたバーンシュタイン補給部隊を奇襲したのだ。この報告が届き、動揺するジュリアン軍にランザック軍は総力を挙げて反撃に出た。ランザック軍はこのとき、必死に編成した3万の軍勢を投入した。滅亡のふちに追い詰められた国の底力をジュリアンは甘く見すぎていたのかもしれない。5千の損害を出し、バーンシュタイン軍は後退した。ランザック王都は危機を脱したのであった。
この後、ジュリアンはガラシールズを拠点に腰を落ち着けてランザック攻略に取り掛かる体勢をとった。この後、救援要請を受けて進撃してきたローランディア軍は撃退された。
しかし、ジュリアン軍にも損害が生じ、単独でのランザック王都攻略は不可能となった。ジュリアン軍は王都に援軍要請を行ったが、バーンシュタインにしても援軍を即時編成する余裕は無く、すくなくとも3ヶ月の時間が必要であった。
ランザック軍にしても王都付近の戦闘での損害は大きく、ガラシールズを一気に奪回することは不可能であった。
ここランザックでも両陣営ともに決め手を欠く手詰まり状態に陥ったのである。
このような状況の中で、3国は水面下での外交活動を活発に行った。バーンシュタインはランザックを自陣営に取り込むべく、占領地放棄による単独講和を求め、ランザックはバーンシュタインに戦前状態への復帰と、ラージン砦付近の戦闘での賠償を求めた。一方ローランディアはバーンシュタインにグレック卿事件への謝罪と補償を条件に講和を求めた。
しかし、どの方針も戦場での決定打が無い中では十分な成果を出すことはできなかった。
しかし、活発化した情報戦争の中で死活的に重要な情報がローランディアにもたらされた。
リシャール王はゲヴェルが作り出したクローンであり、真のバーンシュタイン王はローランディア王国が保護しているエリオットという名の少年である。
俄かには信じがたい情報であったが、裏づけが次々に現れていく。元バーンシュタイン宮廷魔術師ヴェンツェルが証人として名乗りを上げ、このことが真実であることを証言した。さらに、バーンシュタイン王母アンジェラもエリオット少年との会見の後この情報が真実であることを言明した。
展開は劇的の一言に尽きた。
この情報を伝えられたバーンシュタイン将軍の中からエリオットに味方する将軍が続出したのだ。
即ち、インペリアルナイト、ジュリアン将軍、リーブス将軍、そしてジュリアンの父の大貴族ダグラス卿。彼等は「王座を正統な王の手に」を旗印に王都への進撃を開始したのだ。
バーンシュタイン国民は状況の展開に混乱した。リシャール王が化け物から作り出されたクローンであるなどということを信じるのはかなり難しい。
しかし、それを支持している人々は王の親友でもあり、インペリアルナイトでもあるオスカー・リーブス将軍。インペリアルナイトとしてランザックへの勝利で深い印象を国民に与えたジュリアン・ダグラス。その父ダグラス卿も高名な元インペリアルナイトであり、王に忠誠心厚き騎士である。そして、王母アンジェラまでもがエリオットを支持している。
これに対し、リシャール側はこれはローランディアの策略であると絶叫し、加担した人々を売国奴と非難した。
兵も民も動揺した。この問題に決着をつけたのはリシャールの側であった。しかも、自らに不利な形での決着であった。
エリオット派の進撃は急速なものであった。ジュリアン将軍はランザックの占領地域及びガルアオス監獄の兵を指揮下に置いておりその数2万数千。リーブス将軍は1万の兵力をダグラス卿は5千の兵力を保有していた。これに対するリシャール軍は3万5千で、数の上ではほぼ互角であった。
ローランディア・ランザック側はこのバーンシュタインの国内戦争について直接介入は避け、直接攻撃も行わないと決めた。問題はバーンシュタイン人同士の問題にシフトしていた。
戦況はエリオット側の優位に見えた。オスカーやジュリアンが直接先頭に立った。抵抗する者も多かったが、投降する者も多かった。南北から進撃するエリオット軍は王都に迫りつつあった。
しかし、リシャール側はこのときまでに強制徴兵により戦力の増加に成功し4万の兵力を保持した。強制徴兵を受けた地域で不満が高まったことはいうまでも無い。この状況にリシャールではなくそれを操っているゲヴェルのほうが焦りを感じた。仮面騎士の集団をリシャールに加勢させ、これを戦闘に押したたてた即時反撃をリシャールに指令した。
仮面騎士を押し立てた反撃自体は成功を収めた。北方から迫っていたリーブス軍はあまりの損害に退却したのだ。
だが、仮面騎士たちの残忍な戦闘振りがリシャール軍の兵士には異様に映った。バーンシュタイン国内におけるグローシアンの集団虐殺の犯人も仮面騎士ではないかという噂もある。
エリオット派の言い分は正しいのではないか?初めは半信半疑であったバーンシュタイン人はそう考え始めたのだ。
噂は全軍に広がり、やがて国民にも広がった。戦場での勝利は戦争の勝利に結びつかない。ゲヴェルはそのことを思い知らされた。
戦わずにエリオット軍に投降する部隊がうなぎ登りに増えていったのである。
この展開をリシャールは予測していたとも言われる。これが正しいのであれば彼は自分を支配し、望まぬ戦争に駆り立てたゲヴェルに一矢を報いたとも言えるのかもしれない。
エリオット軍とリシャール軍の戦力比は3万対4万であったが、それは投降部隊続出により6万対1万に逆転していた。
このときに及び、ローランディアはもうバーンシュタイン人からの反発の恐れも無いとして、ブロンソン将軍をジュリアン軍の援軍に差し向けた。
エリオット軍は王都を包囲した。
この時、リシャールに従ったのはアーネスト・ライエル指揮する部隊とリシャールに心酔する私兵といってもいい王都守備隊。そしてゲヴェルが派遣してきた仮面騎士の部隊であった。
これらを合計すると1万の兵力であった。包囲軍6万に対してあまりに劣勢な数字であり、なおかつ王都の城壁を守るのにも不足する数値であった。
篭城に徹していれば、相当期間持ち堪えられる兵力ではあった。しかし、城内にはエリオットに内通するものが多数忍び込んでいた。秘密組織たるシャドーナイトですらエリオット派に組するものが出ていたのだからなおさらであった。
そして、内通者達は城門を空けることに成功する。エリオット軍が王都総攻撃を開始したその瞬間にである。
エリオット軍は王都に突入した。これに対し、リシャール軍は最後の抵抗を試みた。しかし、頼みの仮面騎士も数十人に取り囲まれれば簡単に討ち取られ、次第に消耗していく。一般兵も同様であった。エリオット軍は王宮への突入を開始した。
そして、王宮での一騎打ちでリシャールはエリオットに敗れた。
この2人の王の戦いが三国戦争の終わりを告げるものであった。
敗れたリシャールはゲヴェルの洗脳を打ち破った。彼は全軍に戦闘の停止を命じたのだ。それを受けていまだに抵抗を続けていたリシャール軍は仮面騎士を除いて全軍が武装解除に応じた。
戦闘終了後、エリオットは戴冠式を執り行い、正式にバーンシュタイン国王に即位した。新国王は戦争を行っていたローランディア、ランザック両国との間に講和条約を締結した。同条約は領土割譲や賠償金の条件は含まれておらず、戦前の状態に復帰することがその内容であった。
そして、三国は新たに軍事同盟を結んだ。三国共通の脅威が迫っていたためである。
リシャールのその後については昨今の新資料の公開により、従来の悲壮な最期を遂げたというものの他に、カーマインとともに世界の危機に立ち向かったという新説が登場しているが、いずれにしても、彼の墓地に献花が耐えることはなかったという。
彼がまだ王子であったころ、先王を摂政として助け、その政策は国民から信頼を集めた。その彼が遂げた悲壮な死に同情して、あるいは、大きな過ちの後に世界の危機と立ち向かった少年国王に密かなエールを送っているバーンシュタイン人は多い。もっとも、この戦争で親族を失った人々のリシャールに対する感情は厳しいものがあるのも事実である。
現在、リシャールはバーンシュタインの歴代国王とともに静かな眠りについている。
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