9      The Snow War 第1部
◆ 開戦 ◆
 
 
「バーンシュタイン・傭兵国間の関係は急速に悪化しつつあり、戦争となる可能性甚だ増大せり。」
(ローランディア王国駐バーンシュタイン大使 レグルス・マクシムス 報告第987号)
 
 
 傭兵国政府は大陸の安定と平和を乱す恐れのある事象を取り除くことを説に要望するが故に、誠意を持ってバーンシュタイン王国政府に以下の要求を実行されんことを勧告す。
1、両国国境を現在の村以南のラインではなく、スタークベルク以南を国境ラインとすること。
2、新国境より5キロを無防備地帯とし、軍事施設を撤去すること。
以下2条の要求を貴政府が受諾しない場合、傭兵国政府は国益の命ずるとことにより行動することを声明す。
 
 
 
 今年の冬は例年にない大寒波が到来する。という、バーンシュタイン気象情報部の予想は当たりそうだった。
 まだ、季節的には初冬だというのに、真冬のような寒さがバーンシュタイン軍第1軍団の陣地を覆っていた。
「貴方が来てくれてからこれで2年目になりますね。」
 と、ジュリアは天幕の中から外の様子を見ながら言った。
「ああ」
 と、カーマインは淡々とした様子で答えた。
「サンドラ様は宮廷魔術師を辞任され、ラシェルで隠棲されているそうです。ルイセも一緒です。」
「調べてくれたのか・・・」
 黙ってジュリアは頷いた。
 2年間。カーマインが国を捨ててバーンシュタインに向かおうとした時、サンドラは「貴方の正しいと思った道をおいきなさい。私たちのことは心配要りません。・・・・そして、帰りたくなったらいつでも帰ってきなさい。」と、言ってくれた。
 家族を捨て、国を裏切る決断をした自分に。
 そして、バーンシュタイン生きを止めに来たウォレスも又彼を見逃し、国王には「カーマインは既にバーンシュタインに逃走した。」と報告してくれた。
 公式にはグローランサー カーマイン・ホルスマイヤーはもうこの世の人間ではない。
 ローランディア政府の発表によれば「カーマイン・ホルスマイヤーは傭兵国国境において事故死した。」からである。世界を救った英雄が国を捨てたというのではどうも具合が悪い。
 それ故、今の彼の名前はカーマインではない。
 バーンシュタイン王国貴族にして第一軍団第5師団長アルフレッド・フォン・ベルディナット。それが彼の名前だった。
 髪型もゲヴェルと戦ったときのものではなく、右の前髪を伸ばして右目を隠した形にしている。この程度のことでも、彼の正体が悟られなかったのは、彼の顔を知るものがあまりいなかったからだ。
 如何に世界を救ったグローランサーといえども、その顔は一般人にまでは知られていなかったからだ。
「いつか、サンドラ様に会う日もきっと来るでしょう。きっと・・・」
「ありがとう。ジュリア。」
「失礼します。」
「入れ。」
 天幕の外からシャルローネがやって来て、敬礼した。
「第34魔法兵大隊が到着しました。これで、ほぼ全軍が到着です。」
「報告ご苦労だった。シャルローネ」
 これでジュリア指揮下の第1軍団15000人が揃ったことになる。彼等がここに来た理由は演習ではなかった。彼らは戦うべくこの地にやってきたのだ。
 敵の名は傭兵国。
 ジュリアは4週間前、王城でのエリオット王との会話を思い出した。
 
 
「陛下!!」
 ジュリアとカーマインの声がその部屋に響いた。その部屋は鏡の間といわれる、王と腹心が話す場所だった。
「よく来てくれました。」
 と、言って国王エリオットは椅子に座った。
「すっかり国王らしくなったな。」
 懐かしそうにカーマインは言った。彼があのリシャールと戦い王に即位したのは3年前のことでしかない。
 弱冠14歳で国王になった彼の治世は苦難の連続だった。
 ゲヴェルとの戦い。
 傭兵国戦争での敗北。
 しかし、彼は巧みな政策で国を救ってきた。傭兵国に敗北した後、彼はジュリアの献策を採用して、北部山脈地帯への植民地建設を実行し、その鉱脈から産する銀、鉄鉱石、銅、クリスタルによってバーンシュタインを立ち直らせたのだ。
「こういう席では、ちゃんと敬語を・・・」
 ジュリアが悲しそうな顔で言う。そのように言われては流石のカーマインも済まなかったという意味の言葉を口にするしかなかった。
 そんな2人を見ながら王は微笑した。だが、彼はすぐにそれを打ち消した。
「2人に来てもらったのは他でもありません。」
「傭兵国ですか?」
「そうです。」
 2ヶ月前、バーンシュタイン政府は一つの招聘状を受け取った。差出人は傭兵国政府。内容は両国関係の懸案事項処理のための会議への出席を求めるものだった。
 バーンシュタインは外務大臣ティベリウスを特使として派遣した。
 会談は傭兵国外務委員長サイモンの言葉で始まった。
「我が国と貴国の関係は元来敵対的であるが、これは両国国民の負担になるのみならず、大陸の平和にとって好ましくない事態である。よって両国関係の改善は両国政府にとって最優先の課題であると確信する。」
「貴下の両国関係の正常化への意志にこことからの賛意を表する。」
 しかし、最近国境地帯での小競り合いが続いていた。
 どうやって、両国間の正常化を進めるのか?とティベリウスは問うた。
「小競り合いの多発は国境の地形に根ざしている。よって貴国が南部の領土を割譲すればその争そいの種は消えるであろう。」
 ティベリウスは何を言われているのか、傭兵国の外務大臣の真意を測りかね、その顔を見つめた。その様子を見てサイモンは言った。
「貴国の南部領土は余りに我が国の重要な部分に近く、我々はその点に脅威を感じている。よって当該領土を割譲していただければ、両国は友好を打ち立てることができるだろう。」
 意味を理解したティベリウスは反論した。
 貴下のおっしゃる領土は穀倉地帯であって我がバーンシュタインにとってかけがえのない土地である。割譲には同意できない。そもそもこのような要求を戦時でもないのに貴国からされることはまったく不合理である。
 双方の主張は平行線をたどり、会談は暗礁に乗り上げていた。
 しかもシャドーナイトからは、傭兵国がその兵力の移動を開始しつつありとの情報も届いていた。
「交渉が決裂すれば・・・傭兵国との平和条約が危機に瀕するかもしれません。」
「それで、我々に・・・」
 ええ、とエリオットは頷き、王として言うべき命令を伝えた。
「ジュリア・ダグラス。貴方は指揮下の全軍を率い、南部国境に展開。戦争が勃発した場合は、傭兵国軍の迎撃にあたってください。」
「はっ!!」
「戦争になれば、貴方達の軍団が迎撃の主力になるでしょう。バーンシュタインの未来を委ねます。」
 
 
 その2週間後、交渉は決裂し、代表団は帰国した。
 表面上の平和が1週間続いた後、傭兵国は「国境においてバーンシュタイン兵からの攻撃を受けた」として、宣戦を布告した。
 開戦である。
 開戦と同時に傭兵国軍は攻勢に出た。
 国境守備隊を指揮していたアーネスト率いる第3軍団は国境に築かれたスタークベルクに篭城した。傭兵国はこの城を手早く占領すべく鎧兵で攻め立てたがアーネストは頑強にその攻撃を跳ね除けていた。
 その救援に第1軍団は向かっていた。
「シャルローネ御苦労だった。もどっていいぞ。・・・それと、君の弟のピエトロはよくやっているぞ。」
 ジュリアはシャルローネに微笑みかけた。
「ありがとうございます!弟も喜ぶと思います!」
 バーンシュタインにおいては貴族はその子弟を帝王教育の一環として年少のころから軍務に就かせるのは一般的なことだった。
 シャルローネの弟は昨年、煩っていた難病の手術を終え、春からジュリア指揮下の第1軍団に配属されていた。
 まだ、年少ゆえ司令部内の事務がその仕事の内容だった。実戦に出るのはまだ先のことだ。
「ピエトロのことも心配だろうが、お前もがんばってくれ。」
「はい!」
 憧れていたジュリアにそういわれて、シャルローネは嬉しそうに答えた。
 シャルローネが帰った後、天幕の2人は一言も喋ろうとしなかったが、暫くしてカーマインが椅子から立った。
「ジュリア・・・そろそろ第5師団の司令部に戻る。いろいろ準備があるからな。」
「そうですか・・・」
 カーマインが、ジュリアの横を通り過ぎようとした時、彼は言った。
「ジュリア。俺は必ず生きて帰ってくる。」
 くるべき決戦において、カーマインの師団は囮任務を命じられていた。
 危険性はきわめて高い。
「はい」
 ジュリアは声を落とした。
 自分がロードと呼び、大切にしている人にその指示を与えたことは彼女の大きな負担となっていた。
 しかし、指揮官は勝利の追及に手段を選んではならない。たとえそれが身内を死に追いやることになっても。
 だから、彼女は彼に囮任務を命じた。
 指揮官の責務として。
 しかし
 このような言葉を彼に言うことは許されているだろう。
 彼に対する私個人の気持ちを伝える言葉を
「マイ・ロード、1年間のこと覚えていますか?」
「王都での新年際のことか?」
 バーンシュタイン王都では新年になると、その年の無事を祈って、列侯、諸将も集まり、市民とともに新年を祝う。
 その日の夜。王とは光に満ちる。人々は各々の街を蝋燭の光で飾り立てた。蝋燭の光は死んでいった人達の魂。彼らも新年を祝福するからだ。
「ええ、・・・・来年も私の傍に居てください。」
 私は絶対に蝋燭に灯したくはないのです。貴方の魂を・・・
「大丈夫だ。俺も君もこの戦争が終わるときも生きている。だから、これからも新年祭の時は傍にいるさ。」
 カーマインはそう答えると、ジュリアの手を握った。そして、彼女も彼の手に自分のもう片方の手を乗せた。
 その2人の姿をランプが明々と照らしていた。
 
 
 ジュリア率いる第1軍団が救援を試みつつあったスタークベルクの周囲にはそれを囲うように石壁が出来ていた。
 しかし、それは都市の防御のための壁ではない。スタークベルク包囲を命ぜられた傭兵国第7師団の包囲陣地だった。
 陣地の各所には見張りの兵士が立ち、立て篭もるバーンシュタイン軍を監視していた。
 そして、その指揮官も即製の砦の窓から要塞の様子を伺っていた。
 指揮官は名をウェイン・クルーズといった。
 傭兵国独立戦争時、バーンシュタイン軍士官でありながら、傭兵国に身を投じ、幾多の戦線で傭兵たち勝利をもたらした若き英雄である。
 もう、あれから2年か・・・ウェインは思い出した。バーンシュタインを裏切り、傭兵国に参加したあの日のことを。
 あの日から俺は仲間の何人かを敵に回した。裏切られ、憎しみの目で自分を睨んだシャルローネとリビエラのことは一日も忘れたことがない。
 それでも、彼は傭兵国を選んだ。
 傭兵国の指導者ウォルフガング。いや自分の兄を助けたいという思いもあったが、それ以上に彼を動かしたのは兄の唱えた民主主義への共感だった。
 貴族からのいわれのない差別、嘲りにウェインは無縁ではなかった。士官学校にいるときも、その前も、そして軍に入ってからも。
 迷いがなかったといえば嘘になる。だが俺はそれを信じて戦った。
 だが、今の傭兵国でその理想が実現したかと言われれば、そうでもなかった。
 独立戦争の最終決戦での傷がもとでウォルフガングは世を去った。その後、傭兵国には政治委員会が組織され、集団指導体制が敷かれた。ウェインもまたその一員だったが、その政策は民主主義を望んだものではなかった。
 彼らは傭兵国を共和国と呼んだ。確かにこの国には王はいない。指導者は選挙によって選ばれる。だが、その選挙の有権者とは傭兵であって、民衆はこの中には含まれてはいなかった。
 それはある意味で当然とも言えた。何故なら、傭兵国はウォルフガングが建国演説で述べたように「傭兵の、傭兵による、傭兵のための国家」であるからだ。
 傭兵は戦功に応じて土地を与えられ、そこを支配し、国のリーダーを選ぶ。
 なんのことはない、選挙することを除けば、傭兵という名の新しい貴族が出来たのと同じことだった。
 そして、傭兵国は対バーンシュタイン戦争を決意した。傭兵達の生活を維持するには今の領土では小さすぎる。ウォルフガングは迷いの森の開拓を考えていたようだが、それは彼のようなカリスマ的な指導者を必要としていた。だが、もう彼はこの世にはいない。
 ウェインはため息をついた。
 だが、そうは言っても彼は傭兵国に来たことを後悔していた訳ではなかった。
今、彼には仲間がいる。戦いであるいはこの国を作る中で多くの人と知り合い、絆を作った。
 彼らとともにこの国を支えることを嬉しいとも感じていた。
 外を見ながら、そんな思いにふけっていたウェインだったがドアを叩く音で現実に引き戻された。
「どうぞ。」
 ドアの向こう側の人物にそう呼びかける。
「入ります。」と言って部屋に入ってきた少女を見てウェインはわずかに微笑む。
 そして、思った。
 ああ、彼女に逢ったことも後悔しない理由だろうか?いや、一番の理由かもしれない。
 彼女はずっと、独立戦争からこの日まで自分の傍に居てくれた。そして彼女の前に居る時だけは心から安らぐことが出来たのだから。
「アリエータ寒くなかった?」
「ええ、ちょっと寒かったです。」
 と彼女は答えて、暖炉の近くによって冷え切った自分の体を温めた。
 ウェインは彼女に暖かい牛乳を差し出した。
「ありがとう」
 アリエータは差し出されたコップに口を付けた。
「貴方に助けれたのは、もっと暖かい季節でしたね・・・・」
「そうだね。あのロベリカの花が咲いていて・・・もう2年たったんだな。」
 アリエータはためらいがちに尋ねた。
「ウェイン・・・やっぱり怒ってる?ここまで付いて来て。」
「・・・もう、君を戦いにつれて来たくはなかった。」
 暖炉の炎を見ながらウェインは呟く。
 戦場での死は何の前触れもなくやってくる。ウォルフガングでさえもその例外ではなかった。そんな場所にアリエータをかけがえのない存在である彼女を連れて行く機にはなれなかった。ましてや、彼の手の届くところではなく、彼を敵視している指揮官の部隊で戦わせるなど論外だった。
「でも、あの時は・・・」
「ああ、分かってる。」
 アリエータは傭兵国の元首、第一執政委員長ゲルハルト・ミュラーからこの戦いへの参加を求められていた。
 ゲルハルトは独立戦争の英雄であるウェインを従わせることで、まだ十分とはいえない彼の権威を高めようとしたのかもしれない。
 権威とは統治するものにとって不可欠なものであるからだ。
 ウェインはこれを拒否した。
 だが、それは元バーンシュタイン士官というマイナス要因を抱える彼がするにはあまりに冒険的な答えであった。
 だが、彼はそれを変えようとはしなかった。
 だから、アリエータは直接ゲルハルトに要請に従うと返事をした。ウェインを守るために。
 ウェインは声を落とした。
「ごめん、アリエータ。俺は結局何も出来なった。」
 アリエータはウェインの顔を見て、何かを言おうとした。
 だが、その時、ドアのノック音で会話は途切れた。
「失礼します。ウェイン閣下。第5師団所属、ゲージーであります。」
「入れ。」
 若い士官が入ってきた。
「閣下。アリエータ様をお迎えにあがりました。」
 アリエータは第5師団の所属になる予定だった。彼はその迎えに来たのだ。
「すまない。少尉。あと2分待ってくれないか?」
 ゲージーは暫く黙っていたが、2人の様子を見て、わかりました、という顔をして部屋から出て行った。
 彼のような若い傭兵にとってウェインは憧れの存在だった。
 ドアが閉まるとアリエータは言った。
「ウェイン。私がここに来た理由は他にもあるの・・・」
「え?」
「待っているのは辛いの・・・一人にされると本当に一人になってしまいそうで・・・」
 私はずっと一人で、あの遺跡の中にいました。あの時のことを彼女はどうしても思い出してしまうのだ。いつ、ゲーヴァスに消されるかもしれないという不安にさいなまれながら。
 だから
「一人にされると、あの日に戻るんじゃないかって・・・そう思ってしまうんです。・・・たとえ、近くでなくても貴方の傍にいたかった。」
 アリエータは笑った。
「それに、戦争ばかりでも私は幸せでした。」
「・・・そんなこれで最後。みたいなこと言わないでくれ。」
 でも
「本当に幸せだった?」
 ウェインは尋ねた。
 俺は君を遺跡やゲーヴァスからは解放したかもしれない。でも、結局戦いから解放することは出来なかった。
 独立戦争の時も結局君に戦わせてしまった。
 そして、今も。
「私は嘘はついてないですよ。」
 アリエータは少し怒ったように答えを返した。
 私にはあなたがいましたから。
 それに、ハンス、やゼノスさんもみんな言い人ばかりで私を受け入れてくれた。
 だから、私も
「みんなの役にたちたいんです。」
 ウェインは黙った。
 彼女の言うことも分かる。
 しかし、どこかに彼女を安全地帯に置いておきたという思いが捨て切れなかった。
 だが、もう、彼女はここに来た。
 それに、自分は指揮官だ。自分の大切な人だけを護っていればいいという立場ではない。
「アリエータ・・・・きっと帰ってきてくれるよな?」
「はい。私・・・かならず帰ってきます。だからウェインも待っていてね。」
 ウェインは頷き、そして、彼女のことを抱きしめた。
 
 ドアからノックが聞こえた。そろそろ時間だという合図だった。
 抱擁を解いてアリエータは言った。
「じゃあ、行ってきます。」
「ああ。」
 外で待っていたゲージー少尉は連れられて彼女はこの砦を後にした。
 目的地までは半日をすればつくだろう。
 ウェインは窓から彼女の姿が見えなくなるまで見送った。
 彼は目を閉じて、彼女の無事を祈った。
「師匠、入るよ。」
 副官のハンスが部屋に入ってきた。
「すまない、余計な気を使わせてしまって。」
「気にすることはないよ師匠。きっと、帰ってくるだろうから・・・さ」
「そうだな・・・それより話があるんだろ?」
「ああ、そうだった」
 ハンスは机の上にこの一帯の地図を広げた。
 ウェインは第7師団の指揮官の顔に戻って、その地図に目を向けた。
「ジュリア将軍の第1軍団が南下を始めたみたいなんだ。」
「兵力は?」
「歩兵10000、魔導兵3000、僧兵2000。全部で15000の兵力だよ。」
 ウェインは腕を組んだ。
 ジュリア軍の目的は当然この要塞の救出だ。となると、今はこちらの作戦通りということだ。
 要するに傭兵国にとっては要塞とアーネスト軍への攻撃は囮だった。彼等を攻めることで、敵主力のジュリア軍をおびきよせ、これを主力部隊で叩く。
 すでに、ゲルハルト自ら率いる主力部隊28000人は前進の準備を始めていた。
 兵力的にはこちらが勝っている。傭兵国は迅速にジュリア軍を撃滅。一挙に王都まで攻め上るつもりでいた。
 この2つの軍事勢力の運命は2週間後に多くの犠牲を伴いつつ交錯することになった。激突することになる。後の史家が「スタークベルクの戦い」と名づけた戦闘である。
 
 
(つづく)
 
 
更新日時:
2012/03/06 

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Last updated: 2012/7/8