その日は朝からシェルフェングリフ帝国のいたる場所で雪がに舞い降りていた。前年に比べると10日ほど早い降雪だった。降雪は年々早まっていた。太陽の異常はそういったことにも影響を出し始めていのだ。皇帝ジェームズ・ウエリントンの治世10年目の冬のことだった。
だが、雪が降っているのであっても、何か用事がある人間は降雪の状況が許す限り、どこか遠くに行かねばならない場合もある。
この日、ビブリオステイクからポーニア村に通じる街道を歩いている青年もまたそんな一人だった。
ポーニア村はこっちでいいのだろうか?
雪はなにもかも覆い尽くしてしまう。普段なら目印になるものも例外ではない。
「大丈夫です。このまま、進んでいけばあと、30分くらいで着きますよ。」
青年の後ろから声が聞こえた。
彼はその声に向かって「ありがとう」と礼を言う。
もし、その光景を人が見れば、彼が何故、虚空に向かって礼を言っているのか理解できないに違いない。
だが、青年には見えていた。彼の後ろから絶えずサポートしてくれる闇の妖精の姿が。
「まさか、こういうことをさせられるとは・・・」
と、闇の精霊使いレイモンド・A・エーンワースは呟いた。
銀の髪と、細面の顔に人のよさそうな、それでいて整った顔立ちを持つ青年だった。まだ、若く見えるが、彼の闇の力は闇の総本山の5本の指に入るといわれるレベルで、総本山の幹部でもある。
「でも、ピートさんの頼みですしね。」
黒系の服と、三角帽子、そして杖。魔女のような出で立ちの妖精、ルミィの言葉にエーンワースは苦笑した。
「確かに、彼の頼みでは断れないな。」
彼には総本山に一人の親友がいた。ピート・アレンという名前の男だ。ピートは総本山の住人ではなく、もともとは地上の人間だった。剣術の大家で、指揮能力にも優れローランドの将軍を務つとめていた。今から10年ほど前に総本山に連れてこられたという。
エーンワースとピートが会ったのはそれからすぐのことだった。エーンワースのほうが4年ほど前に総本山に連れてこられた。 エーンワースも地上での職業は軍人だったせいか2人はすぐに意気投合し、やがて無二の親友になった。
その彼が「地上に残された娘の様子を見てきてほしい。」とエーンワースに頼んだのだった。
エーンワースはもともと別の任務で地上に向かうことになっていたが、そのついでということで引き受けた。彼の頼みを無碍にも出来ないし、身重の妻を持つエーンワースも人間界に娘を残した親の気持ちは痛いほど分かるような気がしたからだ。
「見えてきましたよ。ポーニア村です。」
「ああ、あれが・・」
300メートルくらい先に村らしい集落が見えてきた。どうやらあれが目的地のようだ。
「ん?」
エーンワースは視界の片隅で何かが動くのを見た。誰かの声もかすかだが聞こえてくる。とても慌てている声だった。
「あ、エーンワースさん!」
ルミィが何かに気付き声を上げる。
「子供が、熊に!!」
彼女の言う先に子供に襲い掛かろうとする熊が見えた。
子供が必死になって熊の牙から逃れようとするが、とても逃げ切れそうに無い。
距離は遠い。エーンワースは反射的に魔法の詠唱に入った。
そして、熊が飛びかかろうとしたその瞬間にファイアーアローの火球が熊の顔面近くで炸裂した。
グアアア!!!
続いて2発、3発と魔法を打ち込み熊を混乱させる。動物は本能的に炎を嫌うからだ。
今だな。
熊がひるんだ隙にエーンワースは駆け出し、子供と熊の間に割って入る。
「逃げろ!!」
しかし、子供は動かない。動けなかった。 足がすくんでいるのだ。
一方熊は態勢を立て直し、こちらに近づいてくる。
「空腹で人里まで降りてきたのか・・・」
エーンワースは再び魔法の詠唱を始めた。闇の精霊使いとして、熊といえども魂をもつものを傷つけたくはなかった。そうでなくても死んでいく命が多すぎる時代であるから。
彼の手に巨大な火球が現れた。先ほどはなったファイアーアローの数倍の大きさがある。恐れをなして熊が逃げてくれればよい。そう考えていた。
だが、熊は彼に向かって突っ込んできた。
飢餓の感情が恐怖の感情に勝ったのだろう。食料がなければ生きていられない。
「我が魔力よ敵を討て!」
エーンワースの手から火球が打ち出され、それが熊を火達磨にした。それでも熊は突っ込んでくる。彼は剣を抜き放ち、それを熊につきたてた。
短い悲鳴とともに、熊は雪の上にドウと倒れた。
彼が倒れた熊を見下ろしているとそこから熊の魂が浮き上がる。彼はそれに正しい道を教える。輪廻の輪へと続く道を。熊の魂はそれを了解し、空へと上っていった。
それを見届けてから、彼はまだ足をすくませている子供に目を向けた。
「立てるか?」
「う・・・うん。」
子供に手を貸して、立ち上がらせると、どこか怪我が無いかを見る。
「うん、よかった。」
どうやら、怪我はなさそうだ。顔色はまだ青いが、それはまだ恐怖心から完全には抜け切っていないせいだろう。
「ありがとう。」
子供は震える声でそう言うと自分の名をピケットと名乗った。エーンワースも自分の名前を名乗ろうとした時に村のほうから声が聞こえてきた。
「おうい!大丈夫か!?」
村のほうから男達が駆けてきた。この子を助けに来たのだろう。ピケットは堪えていたものが一気に噴出したのか、泣きながら先頭にいた彼の父親に抱きついた。
村の男の一人がエーンワースに向き直った。
「ありがとう。あの子を助けてくれて。」
少し遅れて、ピケットの父親も頭を下げた。
「本当にありがとうございます!」
「いえ、たまたま通りかかっただけです。ですが、無事でよかった。」
「見たところ貴方は旅人のようだが。」
「はあ、この村の人に用があったもので・・・」
「この村の者にか?」
「ええ、あー、ローランドで将軍をしていたピート・アレン閣下のご家族がこの村に住んでいると聞いたもので・・・」
「アレンさんの?」
男達は顔を見合わせた。
エーンワースは頭を下げた。
「ああ、失礼しました。私の名前はマーシャル。といいます。」
もちろん、その名前は偽名である。エーンワースは創作を交えて、自分が何故ここへ来たのかを語りはじめた。
「私は元ローランド兵でして、ピート将軍にはその時にお世話になったのです。」
「じゃあ、君はローランドの軍人なのか。」
「ええ、数年前まではそうでした。」と、エーンワースは答えた。
確かにある意味でそれは間違っていなかった。マーシャルという名前のローランド兵がいて、彼がピートから剣を貰ったというのは本当だ。だだ一つ、本当のマーシャルがこの大異変のなかで命を落としていたことを除いては。
「今は、もうやめています。キシロニアで魔法の私塾をしています。・・・」
エーンワースはそう言うと、懐から剣を取り出した。
それは、ピートがローランドに居る時にタイタンを倒す時に使った剣だった。リングウェポンの他にも彼はこれを持ってタイタンに挑み、そして勝利した。
「これを、ピート将軍からあるとき頂いたのですが、将軍が大事にされていたものなので、いつかお返ししたいと思っていたのです。」
「それでわざわざここへ?」
「ええ、ここに住まいがあると聞いたのですが・・・」
「・・・・確かに、アレン家の住まいはあるが・・・ピートはいないんだ。行方不明なんだ。今家に居るのは娘のモニカちゃんと義理の父のアレンさんさいかいないんだ。」
予想通りの答えだが、エーンワースは驚いたような表情を作った。
「・・・そんな・・・では、この災害で?」
「う〜ん。理由が良く分からないのだ。誘拐されたっていう話もあるが・・・残された奥さんは亡くなってしまった・・・」
「そう・・・だったのですか」
「ああ、よければ、アレンさんの家に連れて行ってもいいが・・・」
エーンワースは時計を見た。まだゆっくりするには早い。
「おねがいします。」
この日は、1年の中で最も聖別された日だった。帝国の隅々にまで行き渡った宗教において、神がこの世を創り給うた日とされているからである。
人々は、残りの1年と、次の1年が無事に終わるようにと祈りを奉げる。聖夜と呼ばれる所以だが、それは同時に祭りの日でもある。
人々は時には馬鹿騒ぎしながら、その時間を過ごす。
だから、ポーニア村も活気に溢れていた。村の中心にある広場には商人の店が立ち並び、その品々を珍しそうに村人達が眺めている。
エーンワースはその様子を見つめていた。
「さすがに今日は賑わっていますね。」
「ああ、まあ、ここは静かなところだからね。こういう日でもないと、なかなか賑やかにはならないよ。」
と、ピケットの父親は説明した。
彼は名前をケヴィンといい、この村で宿を営んでいた。
「ははは、何処でも同じなんですね。」
「貴方の故郷も?」
「ええ、まあ、そうでした。」
そう答えるとエーンワースは少し淋しそうな顔をする。それを見て、村人は済まなそうに言った。
「すみません。ローランドは今大変なのに・・」
「いいえ、気にしないでください。」
エーンワースが淋しそうな顔をした本当の理由はそれとはすこし違っていた。
彼の祖国はローランドではなく、この大陸よりもさらに北方にある島国で、その中央辺りにある村落が彼の故郷だった。1年の終わりには、そうこの村のように暖かな賑わいがあった。
だが、彼の故郷や祖国はもはや存在しない。太陽の異常によって今や何もかもが氷河に覆われている。
彼が地上に来た本来の目的はそこでさまよっている魂を輪廻の輪に返すことだった。
そんなことを思い出していた時、エーンワースは自分の頭上に何かの存在を感じ、上を見た。
ケヴィンも上を見上げる。
「ああ、アレンさんのとこのフェザリアンか・・」
空に白く、美しい翼を動かしながら地上降り立とうとする有翼人種、フェザリアンの姿があった。
総本山も昔、精霊使いにフェザリアンがいたことがあり、エーンワースも何度かその姿を目撃していたが、空を舞うその姿は神秘的な印象を与えずにはいられなかった。
「ピート将軍の親戚ですか?」
「ああ、リナシスさんと言ってな、ピートの奥さんのお兄さんにあたるひとだ。昔は気さくだったんだが、今はひどく人間を嫌うようになってしまったのだ。」
「原因は・・将軍の失踪ですか?」
「ああ、彼はそれで自分の妹がピートに捨てられた。と思っているのだ。」
リナシスが舞い降りる先に視線を移した時、今まで黙っていたルミィが囁いた。
「エーンワースさん。あの女の子は・・・」
そこには、未発達ながらも白い翼を持つ少女がいる。
ピートの娘、モニカ・アレンその人だった。
リナシスが彼女の直ぐ傍に降り立った。表情を伺うと、冷たげな表情が浮かんおり、モニカはそれに耐えるような表情だった。
「この近くで奴に似た男を見たという話を聞いた。あの、男は帰ってきていないだろうな?」
リナシスの冷たい声にモニカは首を振る。
「それわないわ。ルーミカ。何の連絡も来ていないもの。」
痛々しい会話だった。12歳の女の子に話すには聞くに堪えない言葉をリナシスはに投げかけ続けた。
エーンワースは思わず何かをいいそうになっていた。しかし、かれがそうするのを別の人間の声が止めた。
「リナシス殿。そのあたりでいいのではないですか?」
「お前は、・・・そうか、ミシェールの」
リナシスに声をかけたのは、帝国軍の見習い士官の服を着た青年だった。会話から察するとリナシスやモニカとは知り合いなのだろう。
「モニカ殿に当たっても仕方ないのではありませんか?」
「何を!人間が・・・・・」
馬鹿にしたようにリナシスは言った。
「ふん。軍に入ったのか・・・本来ならあの妹の傍にいてやるべきではないのか?それなのに、軍人になるとは・・・ピートのように家族を捨てる気か?」
「リナシス。止めて!」
そこまで、大人しかったモニカが始めて批判の声を上げる。
「彼は私の父とは関係ない。・・・そんな酷い事は」
「・・・事実を言っただけだ。やはりお前はそうやって人間と馴れ合っているのがお似合いだな。」
モニカは何かを言おうとしたがオルフェウスに止められた。そして、彼は自分への非難には答えず、別のことを口にした。
「ピート殿は高名な将軍です。我々帝国軍もその行方には注目していますが、まだ、見つかっていません。」
「ふん、帝国軍の捜査など穴だらけだろう。人間のすることだからな。」
「そうでも、ありませんよ。」
オルフェウスは言った。
「あなたが聞いたというその証言ですが、もしや、その出所はビブリオストックのある老人・・・ではありませんか?」
「・・・・・」
リナシスは黙って、オルフェウスの次の言葉を待った。
「帝国の情報部はすぐに動いたそうですが、それはデマであることが確認されました。・・・その人の見間違いだったのですよ。」
確かにピート将軍の似顔絵に良く似た人でしたが、実際にその人物と接触してみれば、ただの傭兵でした。と、オルフェウスは付け加えた。
リナシスは相変わらずの冷たい表情ままで答えた。
「・・・・そうか、まあいい。俺は人間がいうことなど信用しない。」
リナシスはモニカに視線を移した。
「あの男が帰ってきたら知らせるんだぞ。」
「わかったわ。」
モニカは暗い顔で頷いた。
リナシスはそれを認めると背中の翼を羽ばたかせた。彼は自分の体を浮かび上がらせると憎悪と困惑の表情でモニカとオルフェウスを見下ろしながら空へと上がっていった。
「行ってしまったか・・・」
「あの、オルフェウス・・・ごめんなさい。リナシスが酷い事を言って。」
オルフェウスのほうはたいしたことは無い、という感じで苦笑していた。
「いや、私はいいのです。それよりモニカ殿のほうが・・」
モニカは黙っていたが、話題を他のものに移した。
「それより、今日は戻ってもいいの?」
「ええ、帝国軍にも休暇はありますからね。これから帰ろうかと思って居のですが・・」
「じゃあ、行きましょう。私もミシェールの装置の様子を見に行こうとしていたの。」
モニカの顔に少しだけ明るさが戻っていた。
「あの子は・・・」
「ああ、あれが、アレンさんの娘さんじゃよ。フェザリアンのほうはアレンさんの奥さんのお兄さんだ。」
ケヴィンはそこで深いため息をついた。
「昔はあのリナシスもああ、かたくなではなかったのだが・・・アレンさんの失踪からは」
「・・・・そうですか」
それは一つの悲劇だった。人間界で精霊使いの素質を持つ者とその家族の上に降りかかる悲劇だった。
ピートがいなくなったことはモニカにとっても暗く、重いものを投げかけたのだろう。
それを思うとエーンワースも心が痛んだ。
「まあ、行きましょう。アレンさんの家はあそこです。」
アレンの家はその広場の西端にあった。
粗末かもしれないが堅実なつくりで、ガラスも綺麗に拭かれている。
ケヴィンがドアを叩いた。
「アレンさん、アレンさん。」
「今行くよ。」という声がして、ドアが開かれた。
背中に美しい翼を持った老人が現れた。
「おお、ケヴィンさんか。」
「じいさん、お客さんを連れてきたんだ。」
ケヴィンが手をエーンワースに向けた。
「ピートさんのローランド時代の部下だっただ人だそうだ。」
アレンは少し驚いた表情でエーンワースを見た。
「はじめまして、マーシャルといいます。」
「そうですか、始めして。」
アレンは頭を下げた。
「して、どのようなご用件かの?」
「これを届けに着ました。」
エーンワースは持っていた剣を差し出した。
「ふむ、これは・・・」
アレンはその剣を懐かしそうに見つめていたが、客人がまだ外に居ることに気付いて後ろに身を引いた。
「ともかく、ここではなんじゃ。部屋の中にあがりなさい。」
エーンワースはアレン家の家の中に通された。ケヴィンは自分の家に帰っていった。彼は村で宿を営んでいて、エーンワースはそこに泊まることにしていた。
アレン家の中においてあるものは普通の人間の家に比べると少ない。生活に必要なもの以外のものは余りない。実利を重んじるフェザリアンの家だからかもしれない。
「こちらに掛けてくだされ。」
居間に通されたエーンワースは椅子に腰掛け、テーブル越しにアレンも椅子に掛けた。
「もう一度、剣を見せてくださらんか?」
「はい。」
エーンワースが剣を手渡すと、アレンは鞘から剣を抜き、まじまじとそれを見つめた。老人にしては手馴れた剣の扱いだった。もしかしたらリングマスターなのかもしれない。
「うん。確かにピートの剣じゃな。」
剣を鞘に収め、それを机の上に置いた。
「この剣を打ったのはピートの知り合いでな。彼の銘が入っていた。将軍に昇進した時に彼が打ったらしい。・・・そう言っておった。」
「私が海賊討伐に出る時に、この剣を託されたのです。その直後に将軍は退役され、そのままに・・」
「そうじゃったのか。」
アレンは懐かしそうに、その後のことを語った。
ピートがルーミカと結婚しモニカという名の子供ができたこと。
モニカがあの背中の小さな翼を理由に苛められ、この村に移住したこと。
ローランドのことを気にかけていたこと。
そして、ある日突然姿を消したこと。
「ワシも何故、ピートが居なくなってしまったのか分からないのじゃ。・・・何か言えない事情があったのじゃろうな。」
その事情をこの老人が知ることは無いだろう。
精霊使いはその存在自体が秘密である。人間界から選ばれて精霊使いになるものも家族にそのことを話してはならない。
もちろん、それをエーンワースが言えるわけもない。
「他界したピートの妻・・・ああ、ワシの娘もそう信じておった。何かの理由で、彼はそれを言えないままに出て行った。・・・と」
じゃが、ワシには分からない。
「モニカを可愛がり、の将来を気にかけていたあのピートがこの家を出て行くどんな理由があったのか・・・」
「モニカ・・あの小さな羽根のある女の子ですか?」
アレンは意外そうな顔をエーンワースに向けた。
「知っておいでか?」
「先刻、外で見かけました。他の大人のフェザリアンと会っていました。」
そのことを聞くと、アレンは顔を曇らせた。
「リナシスか・・・・あれもルーミカが、自分の妹が居なくなってからすかっりか変わってしまった。・・・昔はあの絵のような時代もあったのだがな・・・」
アレンは暖炉の隅にある一枚の絵を見やった。そこにはルーミカ、ピート、リナシスの絵が置いてあった。昔、モニカが描いた絵だった。
「これは、モニカさんが?」
「そうじゃ。」
まだ、幼いときに描いたものなのだろう。ピート、リナシス、ルーミカの3人が花のある草原で輪になっている。その中心に居るのはモニカだ。
このころに、戻ることはもう出来ない。それがひしひしと感じられた。
「リナシスはルーミカと仲のよい兄妹じゃった。そして、ピートのことも親友だと言っていた。・・・それだけに、ピートの行動が許せないのじゃろうな。」
じゃが・・・
「それを、モニカにあてつけなくてもいいものを・・・」
「・・・そうですね。」
一通り語り終えるとアレンはテーブルの上にある剣をエーンワースのほうに返した。
「届けてくれありがとう。マーシャルさん。じゃが、ワシはこれをあの子に見せるがいいのか分からないのじゃ。すまないが、暫くお前さんが持っていては下さるまいか?・・・これを見せても良い日が来る・・とは思っているのだが。」
エーンワースは頷いた。
「そうですか・・・確かに、今は彼女に悪い影響があるかもしれませんね。」
「この村にはいつまで?」
「数日はご厄介になるつもりです。外はごらんお通りですから。」
「そうか」
「・・・では、私はそろそろ失礼します。」
エーンワースはそういいながら席を立った。
「わざわざ来てくれてありがとう。」
アレンは深々と頭を下げた。
(つづく)
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