24      帝国軍の攻勢は頓挫した

 アウストリンゲという名前の湖がある。
 アグレシヴァル王国の南部中央に位置する。湖の北部には山脈があり反対に南には平原が広がる。王国にとって重要な点は東南部に珍しく肥沃な穀倉地帯があることだ。湖の名前をそのまま村の名前にしたこの一帯は食糧難の時代にとっては何物にも代えがたい場所だった。
 また、そこは帝国から村王国首都まで通じている街道の通り道でもあった。ミネルヴァ街道と呼ばれる道がそれだ。街道は村の中央を通り、山脈の切れ目の通り抜け、王都にいたる。ただ、王都に向かうルートはこれ一つではない。湖の北部にも王都へ向かうもう一つの街道が整備されている。なお、この街道はミネルヴァ街道と湖北東部にある湖を横に見る道でつながっている。もっともその道は狭い、一方に湖、一方を山に挟まれた小さな道だった。
 帝国軍と王国軍の戦闘はこのような地勢を背景に闘われた。
 ヴィンセント軍はミネルヴァ街道から、カニンガム軍がもう一つの街道から王都を目指し、これをアグレシヴァル軍が迎え撃ったからだ。
 アグレシヴァル軍がキシロニア総攻撃をかける2週間前の出来事だった。


「これは、一杯食わされましたな」
 フレイザーはアグレシヴァル軍の陣容を眺めながら呟いた。
 長年、行動を共にしてきた副将格の人物の発言にヴィンセントは頷いた。
昨日までアグレシヴァル軍はカニンガム軍と対峙していた。帝国軍はアグレシヴァル軍の挟撃を狙っており、当然、ヴィンセント軍はアグレシヴァルの背後を衝くべく進軍準備を進めていた。だが、アグレシヴァル軍は突如、進路を変えヴィンセント軍への真正面に現れていた。
「カニンガム軍の正面にあった連中の陣地が偽装だったとはな・・・」
 カニンガム軍の偵察隊がアグレシヴァル軍陣地が無人であることに気付いたのは今日の未明になってからのことだ。夜間に強行軍でこちらに移動したのだ。今、カニンガムは全力でこちらに向かっている。
 幸い奇襲を受けるという事態は避けられた。カニンガムからの連絡を受け、ヴィンセント軍は戦闘態勢を整えていた。
「連中は各個撃破を目指している。カニンガムがここに来る前にケリをつけようとしているのだろう。」
 アグレシヴァル軍は平原に布陣し、ヴィンセント軍は丘の上に陣を布いた。既に戦闘準備は完了した。兵力は4万。これに対し、アグレシヴァル軍は4万3千。僅かではあるがアグレシヴァルが優位だ。
「アグレシヴァル軍は未だ動きませんな。」
「兵の疲労回復に時間を割いているのでしょう。夜間の強行軍ではなかなか戦闘は難しいでしょうからな。」
「ならば、むしろこちらから仕掛けてみては?」
 一人の貴族が言った。まだ若い。
「こちらが、不利であることを忘れてはいけない。今は待ちたまえ。」
「しかし、それではみすみすジェームズ派に手柄を・・・」
 手柄か・・・わからんでもないが。と、ヴィンセントは小さくため息をつき、何も答えなかった。その場の空気に若い貴族は頭を下げた。
 先の内戦の結果、テオドラ派は多くの貴族が所領を削られたり、役職を追われた。彼らにとり、この戦いはそれを挽回する機会なのだった。だが、それでは本当の敵を見失うとヴィンセントは考えていた。今我々はアグレシヴァルと闘うためにここに来ているのであって、ジェームズ派と闘っているわけではない。
「ともかく、守りに徹することにしよう。」
 ヴィンセントは諸将を見回した。
「敵将はあのゲルハルト。何を仕掛けてくるかわからぬ。」
 アグレシヴァルのかつての英雄、そして今は謀略家、というこの人物が指揮していることを考えれば、今の敵の休息は不気味だった。時間が惜しいこの時に兵に休憩を取らせ、ゆったりとした調子で戦列を整える。まるでカニンガム軍など眼中にないかのようだった。
 ヴィンセントは言い聞かせるように言った。
「時間は我等にこそ有利だ。それを忘れぬように。」
 これは間違いないはずなのだ。

 アグレシヴァルの兵たちは次第に疲労から回復しつつあった。敵の意表をつくためとはいえ、夜間の強行軍の後に大規模戦闘では勝てる戦いも勝てない。
「あと、1時間もすれば、こちらは準備万端です。」
 ルーデンドルフが言った。
「敵は丘の上に陣取っていますが、戦力はこちらが優位、それに連中は内戦での事実上の敗者。貴族の私兵にすぎません。」
「そうだな」
 と、ゲルハルトは頷いた。内戦において、テオドラ派の大貴族たちは、正規軍の指揮官の命令を聞かず、大損害を受けることが多かったといわれている。また、兵力でも今の時点ではこちらが上だ。自分が負ける要素はないと思っていた。それが崩れるとすれば、背後から近づいているカニンガム軍の存在だ。
「カニンガム軍はこちらの注文通り動いているか?」
「はい、こちらの想定通り、湖ぞいを全速力で進んできます。」
 ゲルハルトは時計を見た。
 頃合いだな。
「攻撃は一時間後だ。全軍に下達せよ。」
 丘の上にある敵軍を見つめる。
 見える部分にいるのは3万くらいか、後の予備隊は丘の裏側に隠しているのだろう。そして、この丘を攻略するには、ちょどよい具合に丘の左側中腹に小さな高地があり、そこに館が立っている。あそこを占領すれば、丘全体を魔法の射程に捉えられる。当然、敵もそこが防衛上の弱点であると知っている。
「攻めるのはまず、あそこだな。」
 と、知ってか知らずかゲルハルトの口は楽しげに笑っていた。
 ルーデンドルフに指示を耳打ちする。
 やがて、味方の陣地から大声が響いた。
「何事か?」
「はあ、兵たちが罵声を帝国軍に浴びせていまして。」
「そうか」
 それで浮足立つなら別に良いか。とゲルハルトはそれをとどめ置くことにした。貴族の愚か者の中にはあの罵声に本気で反応するものもいるかもしれない。
「臆病者」
「腰抜け」
 その様子を眺めていると後ろから声がかかった。
「お楽しみのようですねえ。将軍。」
「おお、ランドルフか。」
 突然現れた暗殺者に言葉をかける。
「そういえば前に頼んだ依頼はまだ完了していないようだが。」
「おや、これは手厳しい。今は新しい依頼のほうに全力を挙げろとのことでしたが?」
「もちろんだ。お前にとってもやりがいがあるだろう?田舎国家の元首の娘よりも警備厳重な帝国皇族を狙うほうが。」
「まあ、そうえすねえ。」
 と、ランドルフは頷いた。暗殺者としてどのような依頼であれ必ずこなしてきた彼にとって、新しい依頼は困難ではあるがやり甲斐のあるものだった。もっとも、前の依頼も必ず遂行しようとしている。依頼を果たし終えないまま終わるなど暗殺者の矜持が許さなかった。
 それに、あのグレイが生きていたということも彼にとっては許せないことだった。
 必ず血祭りにあげてやる。
 そういう気質を知っているゲルハルトは前の依頼は今の依頼が終わった後にゆっくり遂行してくれればいい。と言った。
 もっとも帝国が片付けば、連邦議長の娘の暗殺など待たずとも連邦など自然に手に入るとも思ってはいたが。
「それはもちろんです。」
 と、暗殺者も応じた。
「これから帝都に向かう予定でしたので、ご挨拶に伺おうと思いましてね。」
「そうか、ご苦労なことだな。」
 その時、帝国軍のほうから大声が聞こえた。
「盗賊団」
「老人に死を」
 戦列は崩さずに帝国軍は王国軍に罵声で対抗していた。
「どうやら、罵声だけで戦列を乱したり、浮足立ったりはしないようですな」
 ランドルフがくくく、と笑いながら言った。
「行きがけの駄賃に、敵の指揮官を殺してもいいのですが・・・」
「ふん、それは不要だ。」
 だいいち、正面から挑んだのでは分が悪かろう。
「お前には、お前にしかできぬことをやってほしい。」
「・・・・では、ご期待に背かないよう働きましょう。」
 ランドルフは一礼すると、陣営から姿を消した。
 ふむ、帝都のほうは奴に任せれば大丈夫だな。
 ゲルハルトは、陣形を乱さない帝国軍を見る。浮足立ったり、陣形を乱すと考えたのはやはり相手を見くびりすぎていたようだ。
「内戦で手ひどく敗北すれば、学ぶこともあるか・・・・」
 ヴィンセント・クロイツァー
 内戦時にはテオドラ派に属した若年の将軍。戦術能力はそれなりにあるようだが。
「さて、帝国の若獅子の実力とやらを見せてもらおうか。」
 時計の針はもうすぐ攻撃開始予定の時間に近づこうとしていた。

「敵軍、前進してきます。」
「来たか。」
 報告の内容は自分の視界でもすぐに確認ができた。平原に布陣していたアグレシヴァル軍が進軍を開始した。
 ヴィンセントは時計を見た。午前11時。味方が駆け付けるまで2時間以上かかるだろう。
 少なくとも彼の軍はそれまで健在でなければならないのだ。
「諸君、戦闘開始だ。夫々の部署に戻りたまえ」
「はっ!」
 諸将はそれ受けて、各自の持ち場に散っていった。
「皆、焦るな緊張しながら待機せよ。まだ、敵の魔法など当たらぬ!」
 部隊の周りを巡回しながらヴィンセントは訴えた。
 敵との罵倒合戦でも言い負けなかった兵士たちは巡回してくるヴィンセントに歓声で応えた。
 士気はそれなりに高いようだとヴィンセントは安堵した。
 轟音が響いた。敵の魔法だ。早々と撃ってきている。
 これに反撃するものはいない。
 敵が近寄ってくるまで撃つな。というヴィンセントの命令は守られていた。
アグレシヴァルの陣形を見ると彼らは中央、左右両翼に分かれてさらにその後方に予備隊らしい集団が控えていた。彼らは次第次第にこちらに近寄ってくる。
「うわああ!!」
 魔法の轟音、どこかの隊に命中したのだ。魔法の狙いも次第に正確になってきていた。
 被害が出た隊にヒーラーが駆け付け、負傷者に回復魔法を唱える。
「将軍!!そろそろ応戦を」
「まだ、待て。」
 ヴィンセントは押しとどめた。この距離ではこちらの魔法の命中率は思わしくない。それならぎりぎりまで引きつけるべきだ。
 王国軍の歩兵達が丘の上を登り始めた。
「総員、構え!!」
 歩兵達は一斉に武器を構えた。槍、剣、斧がアグレシヴァル軍に向けられる。
 魔法はひっきりなしに陣地のどこかに命中し始めた。次第にヒーラーによる回復でも被害がカバーしきれなくなってきたが、それにも歩兵達は耐えていた。
 やがて、魔法兵や弓兵たちも丘を登り始めた。もうじき矢の射程内に入るだろう。
 敵兵の顔が見えてきていた
「今だ!撃て。」
 ここでヴィンセントは反撃を命じた。
 魔法兵達は一斉に火ぶたを切った。
 だが、その狙いは魔法兵ではなく、弓を射る準備をしつつあった弓兵に向けられた。応戦せず、魔法の詠唱を限界まで行っていたため威力も強く、狙いも正確だった。
 アグレシヴァルの弓兵は隊列を乱した。それだけではない。弓兵達も一斉に投射を開始した。その狙いは魔法兵達だ。魔法兵は魔法に強い耐性を発揮するが弓に対してはそうではない。丘の上からの射撃であるため、これまた威力も命中率も強烈だった。
 その様子を見て帝国軍に歓声が上がった。内戦で敗れた自分たちでもアグレシヴァルの主力に一泡吹かせられるのだと言い聞かせているような歓声だ。
「突撃!!!!」
 アグレシヴァルの歩兵達の突撃が始まった。ヴィンセントが魔法や弓の反撃をぎりぎりまで待ったため、弓兵や魔法兵と違って彼らはそれほど被害を受けていなかった。
 敵の魔法兵や弓兵が混乱したことから一時的に魔法や矢が打ち込まれたが、それをもろともせずにアグレシヴァル兵は帝国軍の隊列に突入した。
「かかれー!!!」
 帝国軍の歩兵隊も負けじと応戦した。剣、斧、槍ありとあらゆる武器が狂ったように飛び交った。衝突は左翼側から始まったが、やがて全線に広がった。
 一人が倒れれば後列の補充がその穴を埋める。それは王国も帝国も変わりない。
「予備隊の第1中隊を中央に回せ!!」
 ヴィンセントは前線を駆け回りながら不利と見えた箇所に増援を投入する。
「上ってくる敵を確実に打ち倒すのだ!!」
 個々の兵士を比較するとやはり、帝国はアグレシヴァルに劣っていた。だが、丘の上から攻撃しているという有利がそれを帳消しにしていた。
 皆、よく戦っている。ヴィンセントはそう思った。
 だが、アグレシヴァルのほうはそれどころではなかった。
 攻撃すれば潰走するのではないかと考えていた弱兵が意外にも善戦している。ことの展開に彼らは怯んだ。

「左翼隊を少し下げよ。予備の第3大隊を左翼に回せ。」
 ゲルハルトは一般兵とは違って、それなりに骨のある相手に出会えたことを喜びながら対応をとった。
 彼の指示通り左翼隊が後退を始めた。
「さあ、どう出る帝国軍?」
 答えはすぐに示された。帝国軍は追撃をかけたのだ。下り坂を降り追ってくる。
 ニヤリとゲルハルトは笑う。
 追撃するということは堅固に守られていた守備陣形を崩すということだ。それらな個々の戦闘技能で勝るこちらにチャンスが増える。
そこに増援部隊が到達した。彼らは追撃してくる帝国軍の側面をついたのだ。
 陣形が一斉に乱れ、孤立した一部の敵が押しつぶされていく。
「反撃だ!!登れ!!!」
 アグレシヴァルの左翼隊は再び攻勢に転じた。反撃を受け、混乱した帝国軍は押し戻される。だが、的確な増援がそれ以上の突破を許さない。
 ゲルハルトは中央隊でも同じことを試したが、それには帝国軍は乗ってこなかった。
 成程、軍の統制はとれているな。やはり、なかなかの手練れと見えるな。
「閣下。あまり時間をかけないほうが・・・・」
「そうだな。」
 だが、逆ならどうだ?ゲルハルトは考えた。こちらは攻めている。ここでこちらが守勢に転換したら?
「中央に命令、前進停止。現地点を固守。」
 ゲルハルトは中央部を凝視した。敵は守備位置を動かない。罠を疑っているのだ。
 彼は手を挙げた。
「左翼隊、中央隊に命令。指定を受けた隊を戦列から離脱させよ。」
 中央隊、左翼隊から少しづつではあるが部隊が移動を開始した。彼らは合流しながらある一点を目指す。
 右翼隊の攻略地区の一つ丘の上にある貴族の館だ。ゲルハルトがまずここを占拠したいと思っていた場所だった。
 もともと、この地に住む豪族が作った館だが、高い塀、そして広大な面積によって帝国軍の強力な防衛拠点になっていた。何度か攻撃を受けていたが今のところ突破を許していない。
 だが、ゲルハルトの援軍投入によってその状況は次第に変化していった。



 この調子が続けば守り切れると考えていたのは甘かったか。
 この館の守備を任されたグランフォードは唇をかんだ。
 内戦では中立を通した、グランフォード家も外敵のとの対決である今戦争には参加した。兵力は2個大隊およそ1000人。その人数でこの館を守備していた。
 やれることはやった積りだった。塀の対魔法工作、中庭に設置した木の壁の区画。地の精霊使いの力を利用して敵が侵入用に作っていた秘密のトンネルを埋め立てたり、反対に味方との連絡用のトンネルを作ったりもした。
 戦闘指揮のほうもなんとかしのいでいた。グランフォード家は軍事的な業績が多い家ではまったくなく、先代も軍事上の才覚はあまりなかった。一部から息子もそれと同じだろうと思われていた。
 だが、グランフォードは館の各所を回り的確に弱点を補強し数次に渡る敵の攻撃を撃退した。兵士の士気も上がった。だが、状況はその状態をもってしても急速に悪化した。
 報告が飛んだ。
「敵援軍が出現した模様、再び攻勢にでるようです!!」
「魔法部隊が多いな・・・」
 塀の向こう側に見える敵を凝視する。
 なんてことだ、3000人は超えているんじゃないか?
 先刻から館への攻撃の密度が増した。どこからともなく現れた敵の援軍が集中している。
「こちらの陣地固守方針が逆手に取られたか・・・」
 そして、敵の陣地から魔法の波動が感じられた。塀は既に心もとない状態だ。魔法を何度も喰らい強度は著しく落ちていた。
「正面の塀から離れろ!!」
 グランフォードは決断した。もはや塀は持たない。それなら中庭に設けた木の壁で敵を迎え撃つしかない。
 魔法が塀を直撃したのはそれからすぐのことだった。

 大きな音が聞こえ、クライストは顔を上げた。
「やったぞ!!塀に大穴が空いたぞ!!」
 味方の歓声が聞こえた。隣にいたエルメスも喜びをあらわにしている。
「やったな、隊長!」
「ああ、さっきまではとても近寄れなかったのに。」
 館から打ち出してくる矢や魔法が明らかに衰えていた。部隊は何度も攻撃を仕掛けたがそのたびにあの塀に押し戻された。幸いなことに自分の部隊に死者は出ていない。ウルリカやミリアムのの回復魔法でなんとかしのいでいた。
 近くの部隊が突撃を始めた。
「遅れるな!!俺たちも行くぞ!」
 だが、彼らの前にはまだ関門が待っていた。
「なんだ!これは!?木の壁・・・・奴らいつの間にかんなものを・・・!!」
 僅か数日でこれだけの壁を作るとは・・・とアグレシヴァル兵は歯噛みした。木の壁によって中庭は24の区画に分けられていた。壁はすぐには破壊できない。そこに館に待機していたグランフォード兵の魔法や弓矢が集中した。
 盾を持つ者はそれを一斉に上に向け矢の攻撃を凌ぐ。運悪く貫かれ一撃のもとに倒れる者もいた。そして、魔法は盾の有無に関係なく兵達を巻き込んでいった。
「くそ・・・!これじゃさっきと同じじゃないか!」
「隊長、俺みたいな奴の出番です。」
「エレイン・・・」
 エレインは巨大な斧を出した。普通の攻城戦であれば壁を破壊する投石機のようなものも作れるが今はその余裕がない。木の壁を破壊するならそれは魔法かでなければ大型の武器を持ったものによる攻撃。
「第3師団一の斧使いと言われた俺です。破壊してみせますよ。」
「分かった・・・皆エルメスを援護しながら行くぞ。」
 6人は塀の中に足を踏み入れた。
 敵の反撃で逃げ腰になっていたアグレシヴァル兵だったが、程なく体勢を立て直し、再び木の壁に挑んだ。
「うおおおおお!!!!」
 エルメスは正面の壁に斧の強打を見舞った。壁が揺れ、亀裂らしいものが入る。彼は再び壁を強打する。次第に亀裂が広がる。彼攻撃は確実に壁にダメージを与えていた。
 すると、グランフォード兵の攻撃がエルメスに降り注ぐ。
「ぐう!!!」
 それをクライストがドッズがエイルが自前の盾で矢を防ぐ。
「エレインさん!!」
 ヒーラーのウルリカがエルメスの傷を癒す。
 ミリアムは時折回復に加わりながら、攻撃魔法で援護をかけていた。
だが、すべての攻撃を防ぎきれるわけもなく、皆体のどこかに傷を作っていった。
「・・・・っつ!」
 肩に痛みが走った。敵の矢が鎧の一部を突き破り、少しばかりのダメージを与えられた。が、痛みはあまり感じなかった。
 それよりも部下の現状と、敵の木の壁のほうが気がかりだった。
 エルメスだけでなく、彼を同じようなタイプの兵士が盛んに斧を撃ちかけた。何人かは帝国兵の攻撃に倒れるが、遂に木の壁のほうが限界を超えた。
 メリメリと不気味なおとをたてて壁は崩れた。
「まだ、あるぞ!!」
 次の木の壁が見えた。
 正直ダメージが重なっていた。だが、後ろから助けが現れた。後方にいた威勢の良い部隊が現れたのだ。今まで頑張っていた部隊は後ろに下がるよう指示が来る。
 クライストは新手の部隊が壁に立ちぬかっていく様を見た。
「構わん!!かかれー!!!」
 彼らは壁にとりつき、同じように壁を倒していった。

「なんて連中だ・・・」
 グランフォードは呻いた。
 木の壁でしばらく時間稼ぎできるものと考えていたが敵は手早く壁を倒し続けている。援護魔法も苛烈で被害はまだ小さいがそのおかげで敵にうまく魔法をあてることができない。
「敵の進軍スピードが異常です。」
 彼らの前には木の壁は5つはあるがそのうちの4つ目がもう倒壊しそうだった。相当の打撃を与えているが、彼らはそれを計算に入れていないかのように突進を継続している。
 おそらく予備隊を投入しているのだろう。
 それならここで奮闘したかいがあったということだろうか?
 敵の予備を引きつければそれだけ、主力部隊の負担は軽くなる。壁などの防御設備を使えるこちらのほうが有利だ。
「援護魔法止め!!敵の魔法を撃たれても打ち返すな!魔法の詠唱に専念せよ」
 この上は壁を突き破ってくると敵と一戦交えるほかない。
「歩兵隊は集まったか?」
「はっ!準備完了しております。」
「よろしい。」
 と、グランフォードは応じた。
「4つ目の壁が倒れました最後の壁にとりついています。」
 こちらが魔法の妨害をしなくなったせいで一層スピードが上がってしまったようだ。敵の援護魔法が一層激しさを増した。
 館の壁もあちらこちらで崩壊を始めた。運悪く命を落とす魔法使いもいるが、打ち返すものはいない。
 アグレシヴァル軍はついに最後の壁を破壊し、一拍おいて一斉突撃が始まった。
「撃て!!!」
 それまで魔力をため込んでいた攻撃魔法を一斉に放つ。
 轟音と敵の悲鳴。
 突撃で体力を消耗していたアグレシヴァル側は先頭集団がほほ戦闘不能状態に陥った。
 だが、それもつかの間のことで後ろから現れた補充兵によって再び集団が形作られる。
「かかれ!!」
 歩兵同士の全面衝突が始まった。
 こうなってはもう指揮官も必要ない。グランフォードはためらうことなく、戦闘正面に飛び込んだ。
 そこはアグレシヴァル兵と帝国兵が密集し狂ったように槍や剣が乱舞していた。
 グランフォードは密集しているため、大損害を負った隊を後ろに下げ、後続の隊が戦闘正面に出るということを可能にしていた。
「第2隊下がれ!第5隊と交代だ!!」
 いつまで続くかな・・・第2隊の人数はさっきよりも確実に減っている。
 だが、こちらが絶望する要素だけではない。
「皆踏ん張れ!!」
「グランフォード様!味方です。」
 後ろにいる部下が教えてくれた。自分が味方の方角に向けて作ったトンネルが効果を表していた。そう、これなら敵に気付かれないまま増援を受けることができる。
「皆、我等は見捨てられた訳ではない!守り抜くぞ!!」
 援軍到達に士気を高めた守備兵は怒号ともつかない声でそれに答えた。敵に背を向ける者はいない。
 ちょうどそのこと、湖の向こう側に変化が現れた。
 待ちに待った味方、カニンガム軍が遠望できた。


 貴族の館が持ちこらえたことで、戦いは再び膠着状態に陥った。
 だが、ヴィンセントにとってはそれで十分だった。そろそろ、味方が現れても良いころだ。
「閣下!!味方です!!」
「おう。」
 戦場を飛び回り、返り血と多くの傷を作っていたヴィンセントもこの時ばかりは笑顔を覗かせた。湖の向こう側の道に帝国軍が見えた。もうすぐ戦場に到達できるだろう。
 敵の戦力に質、量ともにやや劣ってはいたが、現在、どの戦列も維持されている。
「皆!もう一頑張りだ!!このまま守り切れ!!!勝利は目前だぞ!!」
「うおおおおお!!!」
 どよめきともつかない叫びを兵士たちは挙げる。
 味方がすぐ近くにいる。そこのことが帝国軍を奮い立たせた。
 だが、向こう側の味方に異変が起こった。
「ん?」
 どうしたんだ?
 カニンガム軍の様子が変だ。何故彼らは湖に向かって進んでいるのか?
 凝視すると彼らの前に白い何かが見える。白い動物か何かか?
 やがて、それは信じがたい光景に変わった。
「ああ!?カニンガム軍が!!」
 彼らは白い何かに湖に追い立てられた。そして、湖は血に染まりだした。
その量は尋常ではない。
「全滅・・・!?」
 そんな馬鹿な話があるか!
 ヴィンセントはその呻きに反問した。
 味方は仮にも内戦の勝利者で、その将はいまや帝国随一の将軍なのだ。兵力も4万以上。それがどうして短期間で全滅するものか。
 だが、目の前の情景はその反問を打ち砕いていた。
 遠目の魔法が使える者は見えていた。
 白い化け物に必死に槍や斧を振り回す味方の姿が。それが湖に追い立てられ、戦列が崩壊していく姿が。そして、湖が赤く染まっていく様が。
 友軍の壊滅。
 希望の情報に後にもたらされた、信じがたい現実がヴィンセント軍に大きな衝撃を広げていった。
 互角に戦っていた戦線もじわりじわりと押され始めた。

 ゲルハルトは戦局が自分のシナリオ通りに動き出すのを感じ取っていた。
 そうだ、これだから戦は止められない。
 戦いをゲームとして楽しんでいる彼にすれば一番、気持ちの良い瞬間であった。
「どうやら効いておるようだな。」
「それにしてもお見事です。あの異形をこのように利用されるとは。」
 この日対岸で発生した事態は霧の日に事故に似ていた。アグレシヴァルの背後を衝くべく、急進軍していたカニンガム軍は敵軍は出現しても少数との考えからとにかくスピードを重視した。
 それはいつもであれば気づくはずの湖を山に囲まれた隘路、霧という危険を完全に忘れさせていた。
 隘路の出口周辺には少数のアグレシヴァル兵がおり、彼らへの攻撃を開始した。だが、本当の敵は側面から山の上から現れた。
 それはが異形の大群であった。
 帝国や連邦にも表れた異形はここでも現れていたのだ。アグレシヴァル軍はこの生物が人間を餌にするのを知っていた。
 そして、彼らにはそれを駆除する余力はなく、動きを封じるのが精一杯だった。その封じ込めた場所に帝国軍が足を踏み入れた形だった。
 湖の道はそれなりの広さのある道だったがそれに隣接しているのは高い山と湖だ。山の上に集まっていた異形は霧の中から長い隊列で立ち往生している帝国軍に襲い掛かった。
 隊形抜きにして帝国軍は反撃したが、やがて異形の白い波の中に消えていった。もしも距離が開いていれば彼らの弱点である魔法で殲滅できたかもしれないが、あまりに距離が近すぎたのだ。
「にしても、現場は凄惨でしょうな。」
「そうだな。処理のほうが大変だ。」
 ゲルハルトは視線をヴィンセント軍に移した。
「ともかく、あとは連中を料理するだけだ。よく戦ったが仲間の後を追わせてやろう。」
「総予備隊。準備完了しております。」
「宜しい。予備隊を敵中央に集中。一挙に敵を分断する。」
 ゲルハルトは手元に残った予備隊投入を決心した。
 これで終わりだ。

「他のところはこっちが有利になったみたいですぜ。」
 クライストは前への注意をそらさずに答えた。
「うん、そうみたいだ。周りの歓声がすごいし。」
 周りから割れんばかりの味方の歓声が聞こえる。戦いが始まってから聞いたことのない音量だ。
 実際、帝国軍の戦列は崩れ始めていた。切り札ともいえる予備隊が投入された中央部は押しまくられていた。
 とはいうものの自分たちの前の敵はまだ元気があるように見えた。回復のため後方に下がっていたクライスト達だったが、回復が終わるとまた前列に呼び戻された。
 前列の様子は悲惨だった。木の壁は突破したはずだったが、建物の中にこもる敵兵の抵抗は激しかった。周り中に負傷者が転がり、時折動かないものも見える。
 近くで轟音が聞こえる。ファイアーボールの魔法だ。弓矢も飛んでくる。
「あいつら、孤立しても怖くないのか!?」
 カインが叫んだ。
 周りの味方が居なくなればここの守備隊は孤立してしまう。それとも捨て石になるつもりなのか。
 暫くすると後方から味方の魔法援護が来た。
 館の建物にぶつかり凄まじい音をあげる。
 辺りが静まり返った。
 あれほど激しかった反撃が来ない。どうしたことか?と建物を眺めると、相当に痛んではいたがまだ崩れてはいない。
 だが、建物のダメージは大きそうだった。
「エルメス。」
 と、大男のことを呼ぶ。
 彼も大方の察しはついていたようだ。あの建物の壁を木の壁と同じような要領で崩せないかと。
「可能性が一番高そうなのはあそこですな。」
 建物に入る勝手口から少し離れた窓。そこには大分亀裂が入っていた。ここからの距離も近い。クライスト達がいる中隊には前進命令が出ており、突撃しないわけにもいかない。それなら生き残る確率が最も高い方法が取りたかった。
「私も援護します!」
 ウルリカとミリアが言った。
「じゃあ、二人の詠唱が終わったら突っ込もう。」
「了解!」
 と、皆普段通りに応答してくれた。相当、死ぬ確率も高い命令なのに。
剣の柄を固く握りしめその時を待った。
 折よく、味方の援護魔法が再び飛来した。そして、二人の詠唱も終わる。
「ファイアーボール!!」
 二人の魔法が亀裂が入った箇所を叩く。援護魔法が来てくれたお蔭で土煙も立っている。これでは敵も自分たちの位置をつかめないはずだ。
「突っ込めー!!!」
 クライスト達の隊が前進した。反撃は来ない。一目散に壁にとりつき、亀裂のある箇所にエルメスが打撃を加えた。
既に十分すぎる打撃を受けていたため、壁はそれだけで崩れ落ちた。
これを見て、他の隊も前進を開始した。
「行くぞ!!」
 反撃が来る。身を固くしながら館の中に足を踏み入れた。
 だが、おかしい。反撃が来ない。
「どうしたことだ・・・・」
 疑問に思う間もなく、別の隊も内部に入ってきた。だが、この期に及んでも敵は一発も撃ってこない。
「敵さん、逃げましたかな?」
 と、誰かが言った。暫く用心深く進んでも何の変化もなかった。
 クライストも死ぬこともありうると思って突っ込んだのだが、これには拍子抜けしていた。
 突撃隊を指揮していたベイ少佐は命じた。
「総員、この館の確保に当たれ!」
 戦闘の要衝であった貴族の館はこうしてアグレシヴァル軍の手に落ちた。
 彼らはそこから帝国軍に向かって魔法攻撃を行った。何も遮蔽物のないところから魔法を撃つ人間と、遮蔽物の中に隠れて魔法撃つ人間、どちらが有利なのかはわかりきっている。
 帝国軍の崩壊スピードはさらにその速度を速めていった。


「左翼、後退します。」
「中央、敵予備隊の猛攻により支えきれません!!」
「右翼、後退の許可を求めています。」
 ここまでだ。
 この戦いで勝利できる見込みはない。とヴィンセントは観念した。
だが、逃げるにしてもよほどうまく逃げないと追撃を受けて殲滅される結果にもなりかねない。カニンガム軍が壊滅した今、我々まで壊滅するわけにはいなかい。
「グランフォード卿の部隊撤退を完了しました。」
「そうか。後方の総予備隊に合流を。」
「はっ!」
「そういえば、貴族との館をつなぐトンネルはどうなった?」
「はあ・・・それが既に埋め立てられたようで・・・グランフォード殿はどうやってそれを行ったのか・・・・」
 精霊使いというのは本当なのだな。
 とヴィンセントは改めて思った。グランフォードは地の精霊使いだという。そして言葉通りにあの館に通じる地下トンネルを作って見せた。通常のやり方ではとても完成できなかっただろう。もっとも精霊の力はむやみに使うべきではないので、できるのはそこまでだ。
 ともかく、
「閣下、右翼隊が後退します。中央部の敵が丘の上まであと少しです。」
「全部隊を後退させよ。」
 さあ、ここからが賭けだ。
 後退とっていもそれは敗走ではなかった。今のところ各隊とも秩序立って後退を行っている。戦列を二つに分け、後方の隊が応戦準備を整えると、前列が退却するという方法だ。
 だが、それも次第に厳しくなる。死傷者ははやり増えていった。
 この状態では以下に小手先の戦芸を行っても大勢に影響は出なかった。
「グランフォード卿の部隊総予備隊に合流しました。」
 そして、もう一つの報告が届く。
「敵部隊中央、丘の上に達しました。」
 ヴィンセントは命じた。
「中央部隊後退せよ!!」
 後退の旗が掲げられると、帝国軍の中央部隊は一斉退却に移った。先刻までの秩序立ったものではない。
「敵が逃げるぞ!!追撃して殲滅せよ!!」
 アグレシヴァル側指揮官は絶叫した。そして、岡の上から下に駆け降りるのだからこれほど楽なことはない。逃げ遅れた帝国兵を殲滅していく。
「進め!!」
 勝ち誇った予備隊は進撃した。中央を突破した以上後方まで蹂躙し敵を包囲下におけばそれで帝国軍は終わりだ。
 だが、彼らはそこで予想外の敵に出会った。
 気づこうと思えば気づけたかもしれない。
 敵の中央隊は前ではなく何故か左右に分かれて逃げていた。そして何もないはずの中央部に敵の予備隊が待ち構えていた。
「攻撃開始!!」
 本来の予備隊に加え、グランフォードの兵も合流し、5千以上の兵力になっていた予備隊は丘の上から駆け降りてくる。逆に言えば急停止できないアグレシヴァル軍に魔法を叩きつけた。ファイアーボール、ブリザード、ホーリークロスあらゆる種類の魔法が注ぎ込まれた。それを受けて、魔法耐性の弱い兵は次々と倒れていく。動揺が発生するその瞬間に歩兵隊の突撃が始まった。
 ヴィンセントも二刀流の剣技で立ちすくんでいた敵の指揮官に切りかかった。左手の攻撃は防がれたが、右手のほうは完全に決まった。
「うぐう!!」
 短い悲鳴を上げて敵兵は倒れた。
「弓隊、敵の指揮官を狙え!!」
 隊列が整っているなら、集中攻撃を受けた敵の指揮官もヒーラー達が回復してしまうかもしれない。だが、今は違う敵の隊列は乱れていたからだ。ヒーラーの回復を受けられない敵の各級指揮官は次々と倒れていった。
指揮官が倒れれば兵は混乱する。歩兵隊はその乱れを的確に衝いた。
アグレシヴァル軍はここで一挙に隊列を乱した。左右に分かれて退却していた帝国軍も一斉に反撃に転じた。
 それまで急進撃を行っていたアグレシヴァル軍中央はこれで完全に攻撃の鋭鋒を砕かれ、逆に押し上げられた。
 中央部の異変にアグレシヴァル軍の攻撃が緩んだ。
 攻撃を続けながらヴィンセントは他の部隊の様子をうかがう。この間にも帝国軍の左翼隊、右翼隊は後退を続けていた。両軍に距離が開き始めた。
「今だ!攻撃止め!こちらも後退するぞ!!」
 ヴィンセントは勝ち誇る予備隊に後退を命じた。
 アグレシヴァル軍からは追撃が来ない。まだ、混乱が尾を引いているのだ。この機に反撃したい者もいたかもしれないが、この混乱は一時的なものだ。すぐに体制を整えるに違いない。
 両軍の距離は開き、やがて矢の射程距離からも魔法の射程距離からも遠ざかって行った。
 丘の上にアグレシヴァルの軍旗が翻り、この戦いの勝利者が誰であるかを教えていた。

「取り逃がしましたな。」
 ルーデンドルフは嘆息した。
「むう・・・秩序だって退却する敵に我武者羅な追撃はかえって不利だ。仕方あるまい。」
 戦闘でアグレシヴァル軍は死傷者4千を出した。
「出来れば、こちらも壊滅させておきたかったが・・・ともあれこれ以上の損耗は望ましくない。」
 我々には仕事が残っている。
 おそらく帝国軍の被害は6割以上には達するはずだ。何しろカニンガム軍は壊滅状態、ヴィンセント軍にも打撃を与えたのだから。
 そして、帝国軍の軍事圧力が無くなった今、キシロニア侵攻の邪魔をするものは居なくなった。
「ルーデンドルフ、兵の休息が終わり次第、キシロニア国境に向かう。」

 帝国軍の最終的な損害は破滅的なものになった。
 8万を数えた帝国軍はそのうち約3万3千が死亡、7千が負傷するというもので、兵力の半分を失っていた。
 ヴィンセントですらその報告に絶句した。
 しかし、これすらも序の口だった。帝国軍に凶報が舞い込んだジェームズが暗殺されたという知らせであった。
 これにより、帝国軍はアグレシヴァルとの国境地帯にまで後退した。
 アグレシヴァルにとってキシロニアを攻略する千載一遇の機会が訪れた。


つづく

更新日時:
2014/03/16 

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Last updated: 2014/3/16

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